第三十話 智天その十二
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「もうな」
「鋭いね、やっぱり」
「そしてだ」
さらに言う牧村だった。
「貴様がいるということはだ」
「ああ、鋭いね」
「あの男もいるな」
「そうだよ、いるよ」
目玉が言うとであった。右手から死神が出て来た。今は漆黒のスーツを着ている。
「ほら、出て来たよ」
「また会ったな」
死神は己の前にいる牧村に対して言ってきた。
「ここにいるということはだ」
「言うまでもないよね」
「闘いか」
「そうだ」
「それだよ」
死神と目玉が同時に彼に告げてきた。
「ここでの闘いになる」
「いいかな」
「まだここには人はいないのか」
「私が開いた」
死神が述べてきた。
「そうした。働いている者はだ」
「殺した訳ではあるまい」
わかっていての言葉である。静かに返すのだった。
「それは」
「私は寿命以外ではそうしない」
これが死神の返答だった。
「死すべき相手以外に対してはだ」
「そうはしないか」
「そうだ。それではどうした?」
「眠ってもらっている」
そうであると。死神は話してきた。
「今はな」
「僕がそうしたんだ」
目玉が笑って言ってきた。
「ちょっとね。目でね」
「目か」
「僕の目には特別な力があるんだ」
彼は笑いながら話す。
「ちょっと見てもらうとそれだけでね」
「眠るか」
「そうなんだ。それだけでね」
「便利な力だ」
死神がまた言ってきた。
「おかげで余計な力を使わなくて済む」
「死神もそれはできるよ」
目玉はこのことも話した。
「ちゃんとね。けれどね」
「眠りは本来は私の力ではない」
そうだというのである。
「私は死を司る者だからだ」
「だからそれだけ余分に力を使ってしまうんだ」
「闘いを前に力を使うのは好まない」
「それでか」
「そういうことだよ」
目玉が牧村の問いに述べた。
「これでわかってくれたかな」
「とりあえずはな。そうか」
「そうだ。そうしてだ」
「闘いだな」
死神の言葉を受けてまた述べた。
「それだな」
「いいな」
死神の言葉である。
「今からだ」
「わかっている。それでは相手はだ」
「中にいる」
死神は右手の親指を後ろのプールの中にやった。ガラスの向こうの場所をである。
「既にだ」
「中にか」
「そこに入る」
そうするというのである。
「それでいいな」
「わかった」
そして牧村もそれに頷くのであった。
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