第三十話 智天その九
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「大学におるからにはじゃ」
「そうだよね。やっぱり」
「講義はね」
「しっかりとやっておるぞ」
それは自分からも言う博士だった。
「わしものう」
「そういえば時々いなくなるのって」
「それだったんだ」
妖怪達にとってはそんな認識だった。
「講義に出ていたんだ」
「そうだったんだ」
「では他にどんな理由でいなくなるのじゃ」
博士は少しむっとした顔と声で彼等に返した。
「それではじゃ」
「まあ考えてみればそうか」
「大学の先生なんだし」
「そういうことじゃ。それにじゃ」
さらに話す博士だった。今度はろく子を見て言う。
「秘書は何の為におるのじゃ」
「仕事の管理だよ」
「そういう意味ではマネージャーみたいなものだよね」
「また妙な言葉を知っておるのう」
妖怪達の今の言葉にこんなことも思う博士だった。
「何処でそんな言葉を覚えたのじゃ」
「漫画で」
「アニメで」
そうしたものからだという。かなり人間文化にも染まっている彼等であった。
「そういうのでね」
「勉強したんだ」
「それでか。まあとにかくじゃ」
「うん、それでだよね」
「行くんだね、今から」
「うむ、行って来る」
あらためて答えた博士であった。そうして席を立ってである。
そのまま向かうのであった。博士も今は大学の教授に相応しく講義に向かうのだった。そしてそれは面白いことに。牧村が今から受けるその講義であった。
講義の前にだ。空いている席に座った彼にだ。友人達が声をかけてきた。
「なあ」
「悪魔博士だけれどな」
他ならぬ博士の仇名である。その名前と外見からきている仇名である。
「幾つだった?」
「御前あの博士と詳しいよな」
「そうだが」
親しいのは否定しない牧村だった。彼等に対しながら答える。
「それがどうかしたのか」
「いやさ、だったらな」
「あの博士が幾つか知ってるよな」
そのことを彼に尋ねるのである。
「一体何歳かな」
「本当に何歳なんだ?」
「それは俺も知らない」
しかし彼はこう答えたのだった。
「残念だがな」
「知らないのかよ」
「親しいのにか」
「いつも博士の研究室にいるのにか」
「それでも詳しくは知らない」
素っ気無く答えるのは彼の常であった。友人達はその言葉に取り付く島もないかといえばそうではなかった。めげずに聞き返したのであった。
「それじゃあ大体でいいからな」
「わかるか?」
「大体で幾つなんだ?」
「百歳は確実に超えている」
それはだというのである。
「それはだ」
「そうか。百歳以上か」
「やっぱりそれだけはあるんだな」
「それは間違いない」
百歳以上はだというのだ。
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