第三十話 智天その八
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「本当にな」
「まあ他のお店のも色々買ってるけれどね」
「山月堂は確かに多いよね」
「だよね」
「多いな。そうだな」
妖怪達の話をしながら食べていく牧村だった。その羊羹をである。
「この店のはな」
「あとお団子もあるけれど」
「そっちもどう?」
団子のことも話すのだった。
「そっちもね」
「どうかな」
「ああ、いいか」
妖怪達の申し出に対してこう返したのだった。
「そちらもか」
「うん、じゃあ」
「はい、これ」
「笹団子ね」
見ればその通りだった。笹団子が差し出されてきた。牧村は楊枝を使ってその笹団子も食べてみるのであった。するとその味は。
「これは」
「どう?こっちは」
「美味しい?」
「美味いが味が違うな」
そうだというのである。
「山月堂のものではないな」
「そうだよ。その別のお店のなんだ」
「どうかな」
それを出してきたのである。
「この味は」
「いいでしょ」
「ああ、この味もいい」
まさにそうだと答える彼だった。
「こちらは素朴な味だな」
「山月堂って上品な味だからね」
「何でもね」
「こちらはそれに対して素朴な味だな」
そうだと話す彼であった。
「しかしこれもだ」
「いいよね」
「こういう味も」
「美味さは一つだけじゃない」
牧村は言った。こう静かにである。
「ビーフシチューでも肉じゃがでもだ」
「同じもの同士でもそうだしね」
「美味しさはそれぞれ別だよね」
「そういうことだ。それではだ」
「それでは?」
「今度は?」
「そろそろ時間だ」
見れば団子も食べ終えていた。そうしてそのうえで身体を起こした。するとここでろく子が出て来て彼に対して言ってきたのである。
「そちらは私が」
「洗ってくれるのか」
「機械に入れてすぐですから」
こう言ってにこにことして彼に話してきた。
「ですから」
「俺が洗うが」
「いえ、それはいいです」
しかしそれはいいというのである。
「ですから」
「そうか。それならだ」
「はい」
こうして皿を渡しであった。牧村は研究室の外に向かう。そうしてそこでまた言うのであった。
「講義に行って来る」
「そういえばもうそんな時間じゃな」
博士もここで壁にかけてある時計を見て述べた。見事な鳩時計である。
「ではわしもじゃ」
「あれっ、博士もなんだ」
「講義なんだ」
「わしも教授じゃぞ」
妖怪達の言葉にこのことを言うのであった。
「だとすればじゃ」
「講義あるんだ」
「ちゃんと」
「当然じゃ。講義を持っていない教授もおらんぞ」
それも言うのであった。
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