第三十話 智天その六
[8]前話 [2]次話
「まだのう」
「それでもその頃から」
「食べ物はあれだったんだ」
「海軍ものう」
ロイヤルネービーのことである。
「ビーフシチュー等があったのじゃが」
「それもまた」
「味は」
「日本人が作った方が美味しかった」
そうだったというのである。
「もっと言えば肉じゃがの方が美味しいものじゃった」
「何でそこで肉じゃがが出るんだろう
「意味不明だけれど」
妖怪達は今の博士の言葉には首を捻ってしまった。
「ビーフシチューと肉じゃがってね」
「全然関係ないんじゃない?」
「どう考えても」
「いや、ある」
しかしであった。ここで牧村が言うのであった。
「どちらも関係がある」
「それはある」
「えっ、あるの!?」
「そうだったの!?」
「そうだ、ある」
また言う彼だった。
「その海軍に関係がある」
「海軍にって」
「どういうことかな」
「わからないよね」
「そうだよね」
妖怪達は首を傾げさせて言い合うのだった。
「そういうのって何か」
「どうにもね」
「どういう関係なの?それで」
「東郷平八郎だが」
彼の名前が出て来た。日本海海戦の大勝利の立役者であり海軍にとって、今の海上自衛隊にとって不滅の英雄である。そして我が国にとってもである。
「彼はイギリスに留学に行っていた」
「ふうん、あの国にね」
「そうだったんだ」
「そうじゃな」
ここでまた声をあげた博士だった。
「当時イギリスは日の沈まぬ大帝国じゃった」
「そして?」
「海軍は?」
「まさに世界の海を支配しておった」
そうした時代だったのである。今は昔の話になってしまっているが。
「その頃じゃからな。日本も人をやってじゃ」
「勉強しに行ってたんだ」
「そうだったんだ」
「そうじゃ。それでじゃな」
「そうだ。そこでビーフシチューを知った」
そうだったと。牧村は話すのだった。
「それをだ」
「そうじゃな。そこでじゃったな」
「で、ビーフシチューはわかったけれど」
「それだけじゃないよね」
「肉じゃがもだよね」
「そうだ」
まさにそれもだというのである。
「そしてその肉じゃがだが」
「うん、どうなるの?」
「それで」
「東郷平八郎は日本に帰ってだ」
話は移っていた。その時にだ。
「日本でそれを食べたいと行った」
「ビーフシチューを」
「それじゃあ」
「しかしだ」
ここで牧村の言葉の色が変わったのだった。
「作る調理担当の兵士はビーフシチューとは何か知らなかった」
「へえ、そうだったんだ」
「ビーフシチューを知らなかったんだ」
「まあ当然じゃ」
ここでも言ってきた博士だった。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ