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髑髏天使
第五話 襲来その一
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                    髑髏天使
                  第五話  襲来
 牧村はこの日朝のトレーニングに励んでいた。朝早くに起きて準備体操と筋肉トレーニングの後で外をランニングする。川の土手のところまで走るのが日課だ。
 今日も同じコースだった。そしていつも目印にしている橋の前まで来た。そこでターンして後は家に帰る。その道を辿ろうとしたその時だった。
「ねえ君」
 不意に彼を呼び止める声がした。
「そこの青いジャージの君、そう君だよ」
「俺のことか」
 牧村はその声に応えて声がした方を見た。声は橋の上、それも柱になっている鉄筋の上からのものだった。声の主はそこに立っていた。漆黒の服の若い男である。
「何の用だと言いたいが用件はわかる」
「あれっ、もうわかるんだ」
「魔物だな」
 汗をそのままに彼に対して言葉を返した。既に身体ごと彼と向かい合い見上げている。
「俺を倒しに来たか」
「もうわかってるなんて凄いね」
「わからない筈がない。ならば来い」
「まあちょっと待ってよ」
 しかし彼は笑ってまだ来ようとはしなかった。
「そんなに慌てなくてもいいじゃないか」
「生憎だが仕事やそういったものは早いうちに済ませる主義だ」
 ぶしつけな言葉で取り合おうとはしない。言葉では。
「来い。すぐに倒してやる」
「せっかちだねえ。噂通りだよ」
「噂か」
「君のことはさ、僕達の間でもう噂になってるよ」
 男は楽しそうに笑いながら牧村を見下ろしつつ言ってきた。
「色々とね」
「髑髏天使としてか」
「そうだよ。普通は人間にはあまり興味がないんだ」
 これは魔物としては意外な言葉だった。少なくとも牧村が抱いている認識とは違っていた。男は次にその答えも述べてみせてきた。
「少なくとも僕はね」
「人間に興味はないか」
「他のことには凄く興味があるよ」
 脚は閉じてそれぞれの手で互いの肘を抱いた姿勢で彼に答えてきた。
「けれど人間そのものには興味がないんだ。食べるつもりも殺すつもりもないよ」
「そうか」
「強いて言うのなら強くはなりたいね」
 ここでは今までの魔物と同じであった。
「僕もね」
「だから俺の前に来たというのか」
「その通り。悪いけれど相手になってもらうよ」
 その言葉と共に彼の周りにある鳥達が姿を現わしてきた。それは。
「烏か」
「友達だよ」
「友達だと」
「そうだよ。烏は僕の友達なんだよ」
 ここでも楽しそうに笑って牧村に告げてきた。
「いつもね。一緒にいる」
「烏か」
 牧村は話を聞いて呟いた。
「貴様は。そうだな」
「うん、そうさ」
 牧村のその呟きににこりと笑って答えてきた。
「僕は烏だよ。これでわかってくれたね」
「わからな
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