第二十九話 小男その二十四
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「あの男にな」
「髑髏天使自体にだね」
「そうだ。面白い男だ」
「まあそれは確かにね」
そのことは目玉も言葉で頷くことだった。目玉と翼だけの身体なので動作で頷くことはできない。だから言葉で頷いたのである。
「無愛想だけれど面白い人間だよね」
「だからだ。刈りたくはない」
「そして闘うことも」
「できることならばだがな」
「君にしては珍しいじゃない」
目玉は彼の話をここまで聞いて考える声で述べてきた。
「そういう考えを持つなんて」
「そうか」
「うん、珍しいよ」
また彼に対して言ってきた。
「とてもね」
「私も変わったのか」
目玉の話を聞いて己のことも述べるのだった。
「だとすると」
「そうじゃないかな。少なくとも前の君とは違ってきているね」
「そうか」
「うん、それは何かね」
こう死神に言う目玉だった。
「そういう感じがするよ」
「そうか」
「まあそれでだけれど」
目玉は話を変えてきた。
「もう帰ろうか」
「帰るか」
「そうだよ。もうやることはないよね」
「ない」
一言で返した死神だった。
「それはもうな」
「じゃあ帰ろう。ここにいても寒いだけだし」
「そうだな。夜ももう寒い」
「何もなくて寒い思いをすることもないしね」
「戻るとするか」
この言葉と共にであった。後ろからバイクの爆音がしてきた。それと共に彼のハーレーがやって来たのであった。それは彼の正面まで来て停まった。
「何処に行く?それで」
「僕達の世界に戻ろうよ」
目玉が言う場所はそこであった。
「その世界にね」
「そうだな。そこで暫く休むとするか」
「うん、だからね」
「わかった。それではだ」
目玉の言葉に応えてハーレーに乗った。そうしてそれを再び動かし何処かに消えるのだった。後に残ったのは静寂に包まれたアリーナとそれを照らす月だけであった。その他にはもう人もいなかった。
第二十九話 完
2010・1・8
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