第二十九話 小男その十四
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「相手をしてやる」
「わかったわ。これ以上の話は無駄みたいだし」
魔物もこれで話を打ち切った。そうしてであった。
「闘いましょう」
「では問おう」
彼からの問いだった。
「貴様は何だ」
「私?」
「そうだ。貴様は何だ」
それを彼女に問うたのだ。
「オーストラリアの魔物だな」
「もっと言うとポリネシアとかもよ」
魔物は楽しそうに笑って牧村に言葉を返してきた。
「所謂南洋全体ね」
「オセアニアだな」
「そうよ。虹蛇様はオセアニアの魔神」
彼はそこを司っているというのだ。魔神として。
「その私がいる場所は」
「何処だ」
「海よ」
微笑んで言ったのだった。
「海にいるわ」
「では貴様は」
「そう、海の魔物」
微笑はそのままだった。そして言葉の調子もである。
「鮫なのよ」
「鮫の魔物だというのか」
「私は鮫人」
自分から名乗って来た。
「それが私なのよ」
「面白い話だな。ここは陸だ」
「それがどうかしたの?」
「それで海の魔物が俺と闘うのか」
「ただし。普通の鮫じゃないわ」
これは断ってきたのだった。
「それも言っておくわ」
「ではだ」
牧村の目がここで光った。
「それを俺に見せてもらおう」
「見たいのなら」
「見たいのなら?」
「来て」
彼から来い、こう言うのであった。
「私にね。来るといいわ」
「いいだろう。それではだ」
「髑髏天使になるのよ」
そうなれと。また牧村に告げた。
「いいわね。そうしてよ」
「いいだろう。それではだ」
彼は両手を拳にした。それを己の胸の前にやる。
その拳と拳を中指のところで打ち合わせると。そこから白い光が放たれた。
白い光が彼を完全に包み込み。そこから出て来たのは。
異形の天使だった。顔は髑髏で身体は甲冑に覆われた。その天使が出て来た。
彼は右手を肘で折ったまま少し前にやって一旦開いた。そしてそれを握り締め。こう言った。
「行くぞ」
「いいわ」
そして魔物は彼女の言葉を受けるのだった。
「それじゃあ私も」
「そういえばだ」
髑髏天使となったうえでの言葉である。
「貴様はまだその姿をだ」
「焦ってるの?」
「見せるのなら見せろ」
こう魔物に告げた。
「さもなければこちらもだ」
「闘えないというのね」
「髑髏天使は魔物と闘うものだ」
魔物に対して返す。
「だからだ。いいな」
「そうね。それじゃあ」
「魔物の姿になれ」
「いいわ」
その言葉と共にだった。幼児の姿が変わった。
顔が徐々に人から魔物になっていく。鮫のものにだ。
手足が鰭になって身体が青くなっていく。
そして背鰭も出て来て。そうして完全に鮫になった。
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