第二十九話 小男その七
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「奇遇と言うにはあまりにも縁ですが」
「貴様等全員で来るというのか」
牧村は自分の前に立つ魔神達に対して問うた。今の彼の横には死神がいる。
「そういうことか」
「いえ、私達は今日はです」
「それはないから」
「安心するのだな」
「私達はね」
「御前達はないというのか」
その彼等の言葉を聞いても油断はしていなかった。それどころかかえってその警戒心を高めさせ今にも変身せんばかりになっていた。
「では。何の為にここにいる」
「いや、それは話さなくてもいいんじゃないかな」
ここで子供が笑いながら彼の言葉に応えてきた。
「もうわかってるでしょ」
「わかってるというのか」
「そうだよ。だってさ」
また言う彼だった。
「今コンサートを開いてるじゃない」
「ではそれにか」
「そういうこと」
ここでにこりと笑ってみせたのであった。
「それに来ているんだよ」
「私達もです」
「そういうことだから」
「今我等は闘うことはしない」
彼等はこう言うだけであった。
「少なくとも我等は」
「それは安心しろ」
「貴様等はか」
しかしだった。彼は彼等の言葉からすぐに察したのだった。実に素早く。
「では他の者は違うというのだな」
「そうだ」
こう言ってであった。紳士が出て来た。その鋭い目を向けての言葉である。
「貴様等の相手はまずは私だ」
「もう一人いるというのだな」
「それは間も無く来る」
紳士は牧村だけでなく死神に対しても告げてきた。彼は丁度牧村達と仲間達である魔神達の間に立っている。その後ろに魔神達がいる形になっている。
「我等が同胞の一人がだ」
「あいつだな」
それを聞いてすぐにわかった死神だった。
「あの者も出て来るのか」
「そういうことだ。これで十一人だ」
ここでまた言う紳士だった。
「我等も揃ってきているのだ」
「そうだな。それはな」
死神もこのことは認めた。
「今は十人だな」
「後二人だ」
紳士はここでその数を述べた。
「後二人だ」
「そしてその二人のうちの一人が今来たのか」
「その通りだ。これでわかったな」
「それはわかった」
今度は牧村が答えた。
「それではだ。はじめるのだな」
「その通りだ」
紳士が応えた。そしてここで。
また老人が言った。その顔を綻ばせてである。
「来られましたね」
「そうだな」
応える死神のその目が鋭いものになった。
「来たか、遂に」
「お待ちしていましたよ」
老人はここで己の左手を見た。そこは紳士の後ろである。そこから来たのである。それは。
小男であった。背は低く額は広く。その彼がやって来たのだ。
痩せたその身体をジーンズと青い上着で包んでいる。背中も曲がったその男がやって来て
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