SAO編
二十三話 刃(やいば)の異名を持つ男
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まただ。また、リョウと自分達の間に明らかで根本的な溝を感じる。
元々、この青年は、偶にどこか常人離れした所を見せる事がある。人の心を読んだかのように話し始めたり、異常な的中率の勘が働いたり。
だが、今回は最早曖昧な物ではなく、明らかな物としてアスナにははっきり感じ取れた。
それはそうだ。実際ついさっき、リョウは平然と人を殺したし、たった今も、リョウは遠回しに、「他人のために殺人をする事になっても構わない。」と言ったのだから。
この世界に、自分以外の者のために殺人を犯せと言われて、平然と了承出来る物がいったい何人居るのだろうか?
少なくともアスナやキリトが知る限りでは、目の前に居る青年一人しか心当たりが無かった。
「な?そう言う訳だから。もう、いいよな?」
「う、ん」
頷くしかなかった。どんなに反論しても、此処ではリョウの言う事が最も上策である事は疑いようも無い。
正直、悔しい。
自分にもっと精神的な強さがあれば……どうしても、そう思わずには居られなかった。
「さーて、んじゃまぁ、パパァ〜っと行くか!」
リョウが得物を構えたまま一気に走りだす。その後ろ姿を見ながら、キリトは拳を堅く握りしめ、アスナは小さく「ごめんなさい……」とつぶやいた。
────
走り出す時、後ろでアスナが言った言葉はしっかりと俺の耳に届いていた。
「ごめんなさい」
まぁ何と言うか、どちらかと言えば申し訳ないのは俺の方だと思う。
殺人の重みを彼らに背負わせたく無いのが根本に有るはずなのに、結局の所彼女たちにも精神的負担をかけているのだから、とんだ詐欺師だろう。
だがそれでも、彼らには殺人だけはして欲しく無い。
まだ俺が人間らしい事を自分自身に証明できるその思いを果たすために、俺は姿勢を低くしてオレンジの群れへと突っ込んだ。
先ずは第一関門、噂もあるため俺を警戒したのか、三人の両手槍使いが俺の前に立ちふさがっている。
俺は原則的に、筋力値を中心に上げている、と言うか殆どそれしか上げていないため、敏捷値はレベルアップ時の自動上昇分だけ。つまり足も腕の振りもレベルの割に相当遅い。
リーチの長い武器を複数使って囲めば、何とか抑えられると思ったのだろうが……
「慣れてんだよ。その対応」
言うと同時に俺は地面を踏みきって、一瞬でその距離を詰める。
勿論走りきった訳ではない。空中に向かって、斜めに低く、低空を「跳んだ」のだ。
通常この世界での「走る速さ」や「腕を振る速さ」等の現象のスピードは確かに敏捷値によって決定されるが、跳躍なら話は別だ。
地面を蹴り、その際身体が飛ぶ「距離」「移動速度」「高さ」は全て、筋力値によって決定づけられる。
まぁ、地を走れないなら空を跳べばいいと。そう言う訳である。
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