第二十九話 小男その六
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「それだけだ」
「そうか。それもいつも通りなのだな」
「わかったら行くといい」
牧村はこれ以上は話そうとしなかった。
「いいな」
「ではそうさせてもらう」
これで死神は姿を消した。そして後に残った牧村はトレーニングの後でシャワーを浴びて身支度を整えたうえで若奈を迎えに行った。場所はマジックの前だ。
若奈も着飾っていた。淡いピンクのロングスカートに白いシャツ、そこに青いカーディガンを羽織っている。その姿で彼を待っていた。
そして彼が来ると。すぐに笑顔を向けるのだった。
牧村はサイドカーを彼女の前に停めて。そのうえで問うた。
「待ったか」
「いいえ、今来たわ」
微笑んで彼に答えた。
「今ね」
「そうか。ならいいがな」
「それじゃあ今からよね」
「コンサートに行くか」
「ええ、それじゃあ御願いするわ」
「わかった」
こんなやり取りの後でコンサートに向かう。そうしてであった。
コンサートの場所はもう満員だった。自分達の席を見つけるだけで大変だった。既にステージには楽器の準備がされているのが闇の中で見える。
一旦席に着くとであった。牧村は一旦そこから離れるのであった。若奈はその彼を見て尋ねた。
「何処行くの?」
「ポップコーンを買いに行く」
こう答えるのだった。
「それと。何がいい」
「コーラね」
彼女が希望するのはそれであった。
「ポップコーンとコーラね」
「それでいいんだな」
「ええ、それで御願い」
こう答える彼女だった。
「よかったら私も行くけれど」
「いや、一人でいい」
こう言うだけの彼だった。
「今はだ」
「そうなの」
「ここで荷物を頼む」
「荷物をね。わかったわ」
「それではだ」
最後にこう告げて一旦ホールを出る。するとその出口で。
「また会ったな」
「貴様か」
そこに死神がいた。ハーレーに乗った時の服装そのままであった。その服でそこにいたのである。
「そういえば同じコンサートに来ていたな」
「だからだ。ここにいる」
こう答える彼だった。
「そういうことだ」
「今度は闘いはない筈だが」
「残念だが予定が変わった」
「何っ!?」
「来るのだ」
いぶかしむ声になった彼に告げてきた。
「いいな、すぐにだ」
「それで何処にだ」
「少なくともここではない」
また答える死神だった。
「コンサートホールから一旦出る」
「そこでか」
「そういうことだ。いいな」
「ここでも闘いだというのか」
「貴様が髑髏天使である限り闘いは続く」
「因果なものだな」
「では来るのだ」
断る選択肢はなかった。彼等はそのまま向かう。そうしてコンサートホールを出る。ホールの外は夜でありもう人は皆中に入っていた。そこに出るとであ
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