第二十九話 小男その五
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「貴様の考えはな」
「人間とは面白いものだ」
またこんなことを言う死神であった。
「見ていれば色々なことがわかる」
「それが興味深いのか」
「そういうことだ。そしてだ」
「そして?」
「貴様もそのコンサートを楽しむのだな」
今度はこのことを問うのだった。
「そうなのだな」
「そうする。それではだ」
「ならそうするといい。私もだ」
「貴様も楽しむのか」
「かつて音楽は神の楽しみだった」
「神のか」
「その頃はまだ人はいなかった」
それは遥か太古の時代のことである。牧村が想像もできないような古い時代のことだ。そのことを死神の口が語るのである。
「その頃は神だけがだ」
「音楽を愛していたのか」
「しかしその曲は単調なものだった」
それでしかないというのである。
「だが今は」
「違うというのだな」
「音楽は人がよくさせたものだ」
そうだというのである。
「神はただ基礎を築いただけだ」
「それだけか」
「そうだ、火を使うことも文字を使うこともだ」
「そういったこともか」
「全ては人が伸ばしていったのだ」
神の力ではない。死神の、神の言葉である。
「人がだ」
「では神は何だ」
「神は見ているだけだ」
「見ているだけというのか」
「それだけだ。大きくさせたのは貴様等人間だ」
「では今日のコンサートもか」
「その通りだ。人間が伸ばした、そしてだ」
言いながらさらに足を進めている。そしてその中においてだ。彼は走る牧村の横を歩き続けている。その彼の横にあのハーレーが来た。
「これもだ」
「バイクもか」
「いいものだ」
そのハーレーに顔を向けての言葉であった。
「乗っているとそれだけで気分がよくなる」
「貴様もまたバイクを愛しているか」
「馬も好きだがこれも好きだ」
そうだというのである。
「一度乗ると病みつきになる」
「コンサートにそれに乗って向かうのだな」
「いつも通りだ。では先に行っておく」
「俺は。そうだな」
「貴様もあのサイドカーでか」
「駐車場は・・・・・・あのサイドカーにはもう関係のないことだな」
話していてそれにすぐに考えが至った。
「自分で動いてくれるからな」
「それは私のこのハーレーも同じだ」
主がなくとも己の横に来たハーレーを見ながらであった。それに乗りヘルメットを取り出す。それに乗って今からそのコンサートに向かおうとする。
しかしヘルメットを被ったところでだ。彼はまた言った。
「自分で私のところに来てくれる」
「只のハーレーではないからか」
「私の考えに合わせて動いてくれる」
「それでは私のサイドカーと同じだな」
「そういうことだ。それではまたな」
「また会おう」
「コンサートの場では何も起こらず音楽に
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