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髑髏天使
第二十九話 小男その四
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「どうもな」
「つまり好き嫌いはそれなりにあるのか」
「今一つ好き嫌いはあるにしてもだ」
 そうだというのである。
「演歌やラップは今一つ合わない」
「ではそれ以外はどうだ」
「駄目な訳じゃない」
 こう述べた。
「これでわかったな」
「わかった。それでそのコンサートだが」
「行くかどうかだな」
「歌手の名前はだ」 
 死神はここでその歌手の名前を話した。牧村はその名前を聞くと顔は前を向いたままだったが声は彼に完全に向けるのだった。
「その歌手はだ」
「行くのか」
「そうだ、行く」
 こう答えるのである。
「その歌手のコンサートにだ」
「そうなのか。貴様もか」
「貴様もそうか」
「二人で行く」
 自然とこの言葉も出た。
「二人でだ」
「そうか。人間は二人で行くものなのか」
「一人で行く場合もあれば二人で行く場合もある」
 このことは言うのであった。それはだ。
「それはだ。しかしだ」
「しかし?」
「今は二人で行く」
 そうだというのである。
「そうさせてもらう」
「人間は面白いものだな」
 死神はそんな彼の言葉を聞いてまた述べた。
「同じ音楽を聴いて楽しむのか」
「そうした楽しみもある」
「成程な。確かそれはだ」
「それは?」
「交際していると言うな」
 死神は少し辿った様にして言葉を出した。
「そうだな、それは確か」
「そうだ」
 牧村の返答はここでも簡潔なものだった。
「そう見られるものも事実だ」
「そして愛を育むのだったな」
 死神の言葉は続く。
「長い間人間を見てきたがそれはよくわからないことだ」
「神の間ではそれはないのか」
「ありはしない。我等の中には夫婦である神々はいてもだ」
「愛情はないのか」
「少なくとも人間の様な交流はない」
 こう答えるのである。
「それはだ」
「妙な関係なのだな」
「それは人間から見たうえでのことだ」
 そうなのであるという。
「だが神は神の関係があるのだ」
「神のか」
「我等は悠久の時間を生きている」
 それが彼等の関係だというのである。悠久の時間を生きているというその関係である。それに対して人間はというとであった。
「しかし人の命は限りがあるな」
「貴様達神から見れば短いな」
「一瞬に過ぎない」
 また言う死神だった。
「まさにな」
「人間はその一瞬の間に生きている」
 牧村はまた述べた。
「そしてその一瞬の間に全てを為さなければならない」
「愛もその中に入っているのか」
「そういうことになる」
 彼はまた答えた。その間にも走り続けている。
「それはわかったか」
「いや、よくわからない」
 ところが死神はこう返した。
「長い間見てはいてもだ。まだな」
「わかりはしな
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