第二十九話 小男その三
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「それはな」
「こうして鍛えていると体調もよくなる」
「人間は身体を動かしてそれで体調も整えるのだったな」
「そうだ」
そのことも話すのだった。
「それもその通りだ」
「そしてそれを楽しんでもいるな」
「運動は好きだ」
また話す彼である。
「だからだ」
「人間はそうしたことも楽しめるのだな」
「神は違うのか」
「鍛える必要はないからだ」
彼は言うのだった。
「その必要はだ」
「ないのだな」
「神は鍛えずとも自然とその力をあげていくのだ」
「それは何によってだ?」
「私は死神だ」
己のことも語る。
「生あるその存在を冥府に送ることでだ。それはだ」
「鍛えられていくのか」
「闘えばさらにだ」
闘いのことも話す。
「強くなっていく。それは言っておく」
「それは人も同じだがな」
「神はさらにだ」
「そうなのか」
「そういうことだ。そうしてだ」
また話す彼だった。今は鎌は持っていないがそれを持っているように見える。心に持っているそれが鋭く輝いているのである。
「いいか」
「何だ」
「今時間はあるか」
彼に対してこう問うてきたのである。
「それはどうなのだ」
「時間か」
「そうだ。それはあるのか」
こう問うのである。
「どうなのだ」
「今はない」
こう返す牧村だった。実に素っ気無い言葉は変わらない。
「見ての通りロードワークをしている」
「そうか」
「しかしだ。これが終わったらだ」
「時間があるのだな」
「その時はな」
「では待とう」
静かにこう言った。
「その時をだ」
「何処かに行きたいのか」
「コンサートだったな」
彼が今話に出して来たのはこれだった。
「人間の世界ではそうしたものもあるな」
「コンサートか」
「それに興味ができた」
「そしてそれに行くのだな」
「そのつもりだ」
まさにそうだというのである。
「貴様もどうだ」
「音楽か」
「嫌いな訳ではあるまい」
こう彼に問うてきた。
「音楽は」
「ジャンルによる」
牧村の返答はこうしたものであった。
「それはだ」
「ジャンルによるか」
「クラシックが好きだ」
まずはこう述べた。
「そしてロックにジャズもだ」
「そういうものもか」
「他にはポップスも聴かない訳ではない」
「では何でもではないのか」
「そういう訳でもない。演歌はあまりだ」
「聴かないのか」
「どうも合わない」
だからだというのである。それで聴かないというのだ。
「ラップもあまり得意ではない」
「ラップもか」
「そうだ。それもあまりだ」
そうだというのである。
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