第二十八話 監視その十九
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それで終わりであった。魔物は動きを止めてしまった。
「ぐっ・・・・・・」
それと共に赤い炎がその身体を包んでいく。それが何よりの証であった。
「まさかな。そうして勝つとはな」
「どうだ」
魔物に対して問う。その時にはもう一人に戻っていた。
「闘い方は幾らでもあるのだ」
「こうした闘い方もか」
「私はこうしたこともできる」
そのことも魔物に対して告げる。
「そのことは知っていた筈だ」
「確かにな」
魔物の方でもそれは認めた。赤い炎は少しずつ彼を覆ってきていた。
「それは知ってはいたが」
「だが。貴様は勝ったと思ったな」
「そうだ」
そのことも認める彼だった。
「それはだ」
「しかし貴様はそれに驕った」
「貴様に勝てると思った」
「それが貴様が敗れた瞬間だったのだ」
「勝利を確信しそれで注意を払うのを怠ったからか」
「そうだ。もっともだ」
ここで死神はまた言う。
「私の今の影に潜ませたのは」
「どうだというのだ」
「咄嗟のことだ」
そうだったというのである。
「それが効を奏したな」
「咄嗟でもそれができるのは貴様にそれだけの力があるということだ」
魔物はその『咄嗟のこと』に対してこう述べた。
「それでだ」
「そう言えるのだな」
「胸を誇っていい。貴様は俺に勝った」
今度はこのことを彼に告げた。
「このラークシャサにな」
「では安心して旅立つのだ」
そうしろというのであった。
「冥界にな」
「そうさせてもらう。それでは俺も」
ここで赤い炎に全身が包まれた。これで彼は消え去った。
闘いが終わりそうして。死神は元の姿に戻った。その頃には髑髏天使も牧村の姿に戻っていた。そのうえで死神に対して声をかけてきた。
「今日はこれで終わりだな」
「御苦労だったと言うべきか」
「別にそうした言葉は必要とはしない」
牧村はそれはいいというのだった。
「勝手にしておけ」
「勝手にか」
「そうだ。言ってもいいし言わなくてもいい」
本当にどうでもいいというのである。
「それではだ」
「帰るのか」
「妹を迎えに行く」
こう言って踵を返すのだった。
「用事がある。だからだ」
「人間の世界の用事か」
「それをしなくてはならない。だからもう行かせてもらう」
「人間として生きているか」
死神はその背を向けた彼に告げてきた。
「それならいいがな」
「いいというのか」
牧村も背を向けたまま彼に応える。
「それならば」
「人間ならばだ」
死神はまた彼に告げた。
「どうということはない」
「最近おかしなことばかり言うな」
「そう思うか」
「思わないとすればその方がおかしい」
牧村はこうも返した。
「何度も何度も言われていればな
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