SAO編
二十二話 その男の異名
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『さて、どうかな?……ま、お前らの力次第だな……』
やはりからかうような笑みを崩さないまま、リョウはそう言って部屋から出て行った。
────
今ならよく分かる。
あの時リョウが言っていた「力」が、いわゆる精神的な強さだったのだと言う事が。
あの時それが分からず、当たり前のように単純なレベル差で作戦は成功、リョウとの約束も簡単に果たせると思っていた自分を殴り飛ばしてやりたい。
そんな事を考えていたのがいけなかったのだろうか、アスナは目の前の金髪の巨剣使いに少々大きく踏み込まれてしまう。
あわてて、向かってきた突きを弾き、即座に反撃の突きを放つ。
だが、反射で動いたその攻撃は、相手がほとんどHPバーを散らした瀕死の状態であることを全く考慮していなかった。
慌てて細剣《レイピア》を相手当らぬように引き戻す。
そして、隙が生まれてしまった。
モンスター相手なら。絶対に生まれなかったであろう絶対的な、隙が。
「あっ……!
思わず漏れた短く細い悲鳴と共に細剣が跳ねあげられる。
かろうじて武器を弾き飛ばされるのには耐えたが、片腕を上げた無防備な状態で、身体が硬直してしまった。
顔に明らかな歓喜の色を浮かべたオレンジプレイヤーが、紫色のライトエフェクトと共に、巨剣を振り下ろしてくる。
避けられない。
あたる。
『あ、私、此処で……』
死ぬんだと、そう思ったとたん、何となく、自分のこれまでの人生が頭の中でリピートされる。
自分が、十七年生きて来た記憶。しかし、何故だかSAOに来る前の十五年間は、まるでただ過ぎただけの日常だったかのように、何処か色がくすんだように印象が薄い。
それから一年半。
ひたすらに元の世界へと戻ろうと努力し続けて来た時間。苦しい物や辛い思い出がほとんどで、何時も悪夢を恐れながら生きて来た記憶。
そんな記憶の中で、つい最近。ここ数カ月の記憶だけが、とても輝いてアスナには見えた。
リョウと出会い、そして何よりキリトと出会い。
何時しか、自分は今までの人生で一番「生きている」と感じられるようになっていた。
これからも、もしかしたら続いたかも知れない日常。
それが今眼前にある死によって失われると思うと、無性に悔しくて悲しい。
今更ながらに後悔した。そして……
「おっおおオォォォォォォォ!!!!!!」
黒い風が、アスナと敵の間に割り込んだ。
発動し、アスナの身体を切り裂く寸前だった凶刃を、その風は軽々と受け止め、はじき返し、そして……
金髪のオレンジプレイヤーの首と胴体を分離させて、この浮遊城から……否、この世から、消滅させた。
────
バシャアァァン!という、プレイヤーが死亡した時特有の、神経を逆なでするよ
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