SAO編
二十二話 その男の異名
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況を覆し、此方が勝利することは難しくない。俺も、初めはそう思っていた。
だが、ラフコフと討伐隊の間には、ある、決定的な差が存在した。
殺人への、忌避感の有無である。
現在目の前に居る、狂騒状態となったラフコフのメンバー。その全員が、誰一人として、HPバーをギリギリまで減らされても降参しない事が分かった時、討伐隊の全員が大きく動揺した。
当然ながら、そう言う状況が有りうる事を事前に話し合ってはいた。
その場合、HPを削りきることもやむなしと、初めに結論を出してもいたはずだ。
しかし、HPバーを真っ赤にした者に、とどめの一撃を刺すとなると……そんな覚悟を、話し合いの一つで決める事が出来るははずも無かったのだ。
そして現在、討伐隊はとどめをさせないまま混戦を続けており、徐々に防戦一方となりつつある。
このままではまずい。
喧噪の中そう思うが、かといって打開策も見つからない。
切り札を使うべきかもしれないが、こんな人の多い名所で使う事は出来ないし、何よりまだ使いこなしていない。
焦りと苛立ちばかりが募り、背筋を嫌な汗が流れる。
──そんな中、その声はやけに俺の耳によく届いた。
「あっ……!」
周りの男たちの怒号よりも、ワントーン高い声。
聞き覚えのあるその声に、右へと首を回した俺の視線の先に居たのは、純白の騎士装の少女。
ギルド《KoB》の副リーダーであり、俺の友人、アスナだった。
その彼女は今、視線の先三メートルの位置で愛用の純白のレイピアを跳ね上げられた状態で、身体を硬直させている。
そして恐らくそれをしたであろうプレイヤー、金色の趣味の悪いツンツン頭に褐色の肌をした両手剣使いのプレイヤーが、奇声を上げながら手に持った巨剣を紫色のライトエフェクトと共に振り下ろそうとする。
──やめろ
策敵スキルで、アスナのHPは分かる。
長時間の戦闘でかなり削られたそれは、既に黄色の注意域まで割り込んでいた。
あの体勢でクリティカルを受ければ、HPバーは削りきられて……
──やめろ
アスナの顔が恐怖に染まる。
その姿が何かとデジャヴする。
周りを埋め尽くすほどの敵。
アスナの髪が黒く染まり、その顔が……
──やめろ やめろ やめろ! やめろ!!
「おっおおオォォォォォォォ!!!」
気が付くと俺は叫びながらアスナと敵の間に走り、割り込んでいた。
振り下ろされた巨剣を弾き飛ばし、伸びきった腕を無理矢理引き戻して漆黒の愛剣を右から左へと思い切り振り抜く。
相手の首へと吸い込まれるように半円の軌道を描いた俺の剣は、目の前に居るそいつの首と胴体を容易に分離させ、HPバーを完全に消滅させた。
アスナは、焦っていた。
人を殺すと言う事がどう
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