第二十八話 監視その十
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「このことをだ」
「そうか。それだけか」
「わかったなら待っている」
言いながらまた前に出た。
「また会おう」
「わかった。それではだ」
牧村もそれに応える。こうして死神とのここでの話は終わった。そうして未久を中学校の校門で迎え彼女を塾に送ってだ。そのうえで一旦家に帰った。
それから夜になり家を出る。サイドカーに乗って夜の街を進む。
「おいおい、サイドカーかよ」
「渋いね」
「いいねえ、あんなの乗れて」
周りの中学生や高校生がそのサイドカーを見てやっかみの声をあげていた。
「格好いいよな」
「俺だってそのうちな」
「だよな」
牧村はそんな彼等の言葉を聞きながら夜道を進む。そうしてその河川敷に着くとだった。
もうそこにはハーレーが停まっていた。そして彼がいた。
「来たか」
「魔物は何処だ」
「もうすぐ来る」
今はこう返すだけだった。
「相手はだ」
「あの仙人か」
「そしてもう一人いる」
死神はこう返した。
「それはだ。クマゾッツだ」
「あいつか」
牧村はその名前を聞いてすぐにわかった。
「あいつがか」
「これでわかったな」
「それだけで充分だ」
「ならいいな」
死神もこれ以上言おうとはしなかった。そうしてであった。
目の前に彼等が出て来た。まずはあの仙人がだ。
「暫く振りじゃな」
「会いたいと思ったことはない」
牧村は表情を全く変えず彼に返した。
「貴様だけでなく貴様等全員とだ」
「そうか。では闘いは」
「貴様等とは違う」
牧村はまた言葉を返したのだった。
「それは言っておく」
「そうか。それはわかった」
仙人はそれを聞いてだ。彼の前で足を止めたのであった。
そしてその彼の横にだ。あの子供が出て来たのである。
子供はまずは牧村を見た。そして次に死神をだ。そしてそのうえで言うのであった。
「久し振りって言うのかな」
「貴様にも会いたいと思ったことはない」
牧村は子供にも同じ言葉を返した。
「闘いたくて生きているのではない」
「つれないねえ。遊び相手なのにね」
子供は純粋な笑みを浮かべて彼の言葉に告げた。
「そんな言葉はないんじゃないかな」
「遊んでいるつもりもない」
牧村のその素っ気無い言葉は続く。
「それも言っておく」
「やれやれだね。まあいいや」
「諦めたな」
「お話は僕達の遊びじゃないしね」
それについてはこう返す彼だった。
「これでいいよ」
「そうか」
「それでだけれど」
ここで彼との話を打ち切りそのうえで今度は彼だけ出なく死神に対しても言ってきた。
「今回は僕も来たよ」
「私は貴様等の魂を刈る」
死神の声は牧村のそれとは違っていた。鋭い、まさに大鎌の鋭さをそこに見せていた。
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