第二十八話 監視その八
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「それでだ」
「そうね。それならね」
若奈もここまで聞いて顔を少しだけ縦に動かした。
「いけるかしら」
「何だかんだでイギリス王室は話題になる」
「我が国で言うとやっぱり」
「皇室だ」
牧村はまた言った。
「皇室の方々が飲まれているお茶となると」
「凄い宣伝になるわね」
それもわかった彼女だった。
「じゃあそれと同じで」
「しかも本当だから余計に話題になる」
それもあるというのだ。
「あの王家は世界でもかなり有名だからな」
「じゃあエリザベス二世も飲んでいるとか?」
「それもいい」
少なくとも悪くないという。
「それでどうだ」
「わかったわ。じゃあそれでいくわ」
若奈はここまで聞いて納得した顔で頷いた。
「そのイギリス王室御用達のお茶の葉でってことでね」
「これなら多少高くても飲みたいという人間はいる」
「そうね。だったら」
「あとはだ」
ここまで話してさらに言うのであった。
「努力だけだ」
「宣伝の?」
「それとその茶の味を上手く引き出すだ」
「その努力もなのね」
「そうすれば売れる」
彼は言った。
「間違いなくな」
「素材とそれを引き出す腕と」
「そして宣伝だ」
「何か商売の基本ね」
「しかしそれができているとだ」
「そうね」
ここから先は生まれついての喫茶店の娘として本能的にわかっていることだった。
若奈はにこりと笑って。それで言うのだった。
「売れるわね」
「そういえばこの店には」
「看板はお茶とコーヒーよ」
その二つだというのだった。
「そしてとりわけね」
「コーヒーか」
「お父さんはそっちの方が淹れるの上手いから」
だからだというのである。
「それでね」
「それなら紅茶も入ればだ」
「余計にお客さんが来るってことね」
「少なくともこの紅茶はだ」
「看板になる」
話はさらに込み入ったものになった。
「そういうことね」
「それでどうだ」
「いいわね。だったら」
「マスターにも話してくれるか」
「ええ、それはね」
すぐに頷いて返事を返したのだった。
「話しておくわ、お母さんにもね」
「そうしてくれ。それでだ」
「ええ。それで?」
「お菓子は何かあるか」
それを頼むのだった。
「お菓子はだ」
「ええ、何がいいかしら」
「タルトがいい」
それだというのである。
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