第二十七話 仙人その十六
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「成程な。貴様が強い筈だ」
「これでわかったな」
「嫌でもわかる」
落ち着いた声で返した彼だった。
「それではだが」
「何だというのだ?」
「こちらも楽しませてもらう」
にこりともせずに言ってみせたのだった。
「この闘いをな」
「楽しむというのか」
「私のこの鎌は命を冥府に送り届ける鎌」
まさにそれだというのだ。
「それに魔物をかける時は闘うのが常」
「今もだな」
「ただ闘うだけでは味気ないもの」
「だからこそ楽しみもするというのだな」
「如何にも」
応えながら魔物に身体を向ける。そうして再び対峙する。
「その通りだ」
「貴様もまた闘いを嗜むというのだな」
「そうかも知れない。そういう意味ではだ」
魔物の言葉を肯定してみせた。そうしてだった。
今度は鎌を投げた右から大きく振り被りそのうえでだ。
鎌は激しく回転しながら彼に襲い掛かる。そのうえで切り裂かんとする。
だが魔物はそれも姿を消すことでかわしてしまった。また声だけがした。
「話の続きだが」
「それか」
「我等と同じだというのだな」
「そういうことだ」
鎌は激しく回転しながら旋回し元に戻ってきた。死神はその鎌を右手で受け取ってみせた。そのうえで再び両手持ちで構えるのだった。
「だが。一つだけ違うことがある」
「何だというのだ?それは」
「私は溺れはしない」
それだというのだ。
「闘いに溺れることはない」
「そこが違うというのか」
「そうだ」
「では貴様は何だ」
「死神だ」
返答は一言だった。
「それ以外の何者でもない」
「だから闘いにも溺れないのか」
「闘いとは命を刈る為のもの」
彼にとってはそうなのだった。やはり死神であった。
「それ以外の何でもないからだ」
「だからこそ楽しんでもか」
「溺れることはない」
彼はまた告げた。
「そういうことだ」
「確かに我々はだ」
彼の言葉をここまで聞いた魔物は述べてきた。
「闘いを嗜む」
「だからこその魔物だな」
「そして溺れてもいるだろう」
このことも否定しないのだった。
「しかしだ」
「しかし?」
「それを受け入れている」
そうしているというのであった。
「自ら進んでな」
「それによって魔物となっているのか」
「そうだ。我等は自ら魔物になっている」
彼は言い切った。
「それこそが我等の誇りだ」
「そこまで言えるのだな」
「言える。闘いこそが我等の全て」
「では聞こう」
言い切り続ける魔物に対しての問いだった。
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