第二十七話 仙人その十二
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「適度な運動と頭も動かせば完璧らしいな」
「それで百歳まで生きられるのか」
「そうやったら」
「そうらしい」
牧村の言葉は続く。
「そうやってらしい」
「平均寿命大幅に超えてか」
「そうなれるのかね」
「百歳ねえ」
このことがどうしても彼等にとっては遠くのものにしか思えないのだった。彼等はまだ二十歳なのでそれも当然のことであった。
その二十歳の彼等がだ。思うのだった。
「そんなに長生きできるかね」
「無理じゃないのか?」
「だよな」
こう思わざるも得ないことだった。
「精々八十だろ」
「七十じゃないのか?」
「それ位だろ」
こう話されるのだった。彼等にしてみればそうだった。
「何かな。そこまでってな」
「ああ、とてもな」
「生きてないだろ」
「だよな」
「しかしな」
ここで一人が言った。
「言い換えるとな」
「何だ?」
「どうなんだ?」
「百歳まで生きるとな」
博士のそのことの話であった。
「ああなれるのかな」
「博士みたいにか」
「なれるっていうのか」
「博士みたいにして相当上手くやって運がよかったらな」
かなり限定はしたのであった。
「なれるんだな」
「百歳までか」
「長いな、本当に」
「あと八十年だぞ」
その歳月も話される。今の彼等の年齢の四倍である。
その四倍の長さも感じながらだ。話されるのだった。6
「それだけ生きたら色々あるだろうな」
「俺今でも充分色々あったぞ」
「俺もだ」
その二十年の彼等にしろであった。
「何かその四倍も生きているってな」
「二十年入れたら五倍か」
「どうなるんだろうな」
そのことはどうしても想像もできないのだった。あまりにも長い話だからである。
「その間な」
「それで百歳になったら」
「仙人か?」
「だよな」
そうも考える彼等だった。
「博士みたいにな」
「なりたいか?それ」
「どうだろうな」
そう言われると少しわからない彼等だった。やはりどうしてもピンと来ない話だったのだ。百歳というのがそれになってしまっているのである。
「それについてはな」
「まあそれでな」
ここで一人が話を変えてきた。
「食べるか」
「ああ、そうだな」
「その月餅な」
話がそれに戻った。月餅にだ。
「それじゃあ講義の後でな」
「九十分後か」
「待ち遠しいな」
「しかしだ」
また牧村が彼等に言ってきた。
「まさかここで食べるわけにもいくまい」
「ああ、それはな」
「やっぱりな。まずいだろ」
「そろそろ講義もはじまるしな。それに」
「無作法だろ」
それもわかってはいる彼等だった。それだけの分別はあるのである。
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