第二十七話 仙人その九
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「だからね。皆で食べないと」
「美味しいのなら余計にね」
「はい、またどうぞ」
今度はろく子が彼にその月餅を差し出してきたのだった。
「もう一つ」
「悪いな」
「御礼はいいですよ。ですから皆で」
「だからか」
「はい。私も同じ考えですから」
その知的な美貌をたたえた顔での言葉だった。
「美味しいものは皆で」
「そうだな。皆でな」
「食べてこそですよ」
言いながら彼女も食べていた。その月餅をである。
そうしてそのうえで。こう言うのであった。
「美味しいですね」
「皆にか。そうだな」
言われてだった。彼はふとあることを思いついた。
思いつくとすぐにであった。博士に対して言った。
「頼みができた」
「何じゃ?」
「月餅はまだあるか」
まずはこのことを問うてきたのだった。
「月餅は。どうだ」
「あるぞ」
あると答える博士だった。
「何箱でもな」
「それだけあるのか」
「そうじゃ。では一箱持って行くといい」
既に彼が何を所望なのか察している博士だった。
「二十四個入りをな」
「それだけか」
「美味いものは幾らあっても足りんものじゃ」
また笑顔で言う博士だった。
「じゃからそれを持っていくのじゃ」
「悪いな。それでは」
「はい、これ」
「どうぞ」
早速妖怪達がその箱を持って来た。その二十四個入りの大きなものをである。
その箱を差し出してだった。笑顔で言うのであった。
「やっぱり牧村さんはいい人だよ」
「そうだよね」
「いい人か。俺が」
だが牧村はその自分には懐疑的な声を変えすのだった。
「俺はそうはだ」
「思ってないの」
「自覚ないとか?」
「そう思わないだけだ」
それだというのである。
「特にな」
「そうなんだ」
「まあそれならそれでいいけれど」
妖怪達も深く突っ込むことはなかった。静かに言うだけだった。
「まあそれじゃあね」
「それあげるから」
「わかった」
箱を受け取ってそれで応えた牧村だった。
「それではな」
「とりあえずネクロノミコンの解読じゃが」
それに話を戻してきた博士であった。
「暫く待ってくれ」
「時間がかかりそうか」
「他にも調べないとならんことが多くてのう」
多忙な博士であった。
「じゃからな」
「わかった。では待たせてもらう」
牧村はここでもこう返したのだった。
「そういうことだな」
「ではな。またな」
「じゃあね」
「またね」
妖怪達は明るく彼に挨拶をした。
「何かあったら来てね」
「またお菓子用意しておくから」
「さて、今度のお菓子はじゃ」
博士がここで楽しそうに話すのだった。
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