第二十七話 仙人その五
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「姿はそれまでの天使と同じじゃが」
「何かが違うんだ」
「何が違うの?」
「翼が六枚あるのじゃ」
その天使は翼なのだった。
「上の二枚で顔を隠し下の二枚で身体を隠しそれで飛ぶのじゃよ」
「それも異様だよね」
「そうだよね」
ここでまた言い合った妖怪達だった。
「何かこれまでの天使と全く違って」
「化け物みたいだよ」
「一応言っておくがじゃ」
ここで博士は牧村に顔を戻して話した。
「君が智天使になってもじゃ」
「顔が四つにならないとでもいうのか」
「それはない」
ないとはっきりと答えたのだった。
「今ここにある文献じゃが」
「今度は本だな」
見れば古い書であった。今度は木簡でも縄でも粘土板でもパピルスでもない。今よく広まっている形のそうした書の形をしているものだった。
「それか」
「法皇庁から貰ってきたものじゃ」
つまりバチカンからである。
「そこにあったルネサンスの頃の書じゃが」
「それに上位の二つの天使のことが書いてあったのか」
「その姿形だけはな」
書いてあるというのである。
「書いてある。それによるとじゃ」
「顔は四つではないのだな」
「うむ、それはない」
微笑んで牧村を安心させるように告げてみせたのだった。
「顔は一つじゃ。髑髏のままじゃ」
「そうか」
「しかし翼は四つになる」
だがそこはそうなるというのだった。
「四つにな」
「四つにか」
「それで熾天使になるとじゃ」
「六枚になるのだな」
「そういうことじゃ。もうわかってくれたようじゃな」
「話を聞いていればわかることだ」
いつもの様子に背中を壁にもたれかけさせたままの姿勢で述べる牧村だった。
「それでだ」
「左様か」
「そうだ。六枚の翼か」
「色は智天使は銀じゃ」
その色だというのだ。
「熾天使は金になる」
「銀と金か」
「わかったのはここまでじゃ」
それで終わりだというのである。
「能力やそういったものは全くじゃ」
「わからないのか」
「じゃが。相当なものであるのは間違いない」
これは確かだというのである。
「それはな」
「そうか。それだけの力はあるか」
「わかったな」
ここまで話して牧村に問うたのだった。
「それはな」
「わかった。そうか」
実際に頷いてみせた彼だった。
「四枚の翼か」
「そうじゃ。しかしどうにもな」
「今度は何だ?」
「何かのう。この文献を読んでいたらじゃ」
「何かあったのか」
「金と銀じゃ」
色のことを言う博士だった。
「この二色じゃが」
「どうかしたのか」
「いや、今までの髑髏天使の色じゃが」
色のことをさらに話していく博士だった。
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