第二十六話 座天その十六
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老人はいつもの温厚な笑みのままである。しかしであった。
「さて、それではです」
「何を出してくるつもりだ」
「今回は特別でしてね」
笑みをそのままにしての言葉であった。
「この魔物です」
言うとであった。不意に後ろから巨大なものが出て来た。
それは凄まじい速さで老人の後ろまで来た。そしてそのうえでその禍々しい姿を見せるのであった。
「御呼び頂き何よりです」
「頼みましたよ」
「はい、百目様」
魔物は己のすぐ前にいる魔神の言葉に頷いた。それは髑髏であった。人の上半身を持ち下半身と両手が蟷螂になっている、異様極まる髑髏であった。
全体で十五メートルはあろうか。その巨大な髑髏を見て牧村は思わず言った。
「変わったどころの姿ではないな」
「がしゃどくろといいます」
老人がその魔物の名を告げてきた。
「御存知ないようですね」
「はじめて聞く名前だ」
こう返す牧村だった。
「それがこの魔物の名前か」
「その通りです。彼女が相手でいいですね」
「彼女!?」
魔神の今の言葉にふと目をやった。
「その魔物は女か」
「そうです。意外でしたか」
「意外どころではない」
また言葉を返すのだった。
「女だったとはな」
「蟷螂ならば女でしょう」
老人が言うにはそういうことであった。
「だからなのですよ」
「それでか」
「はい、では貴方の今回の相手は彼女ということで」
「わかった」
それでいいと返した牧村だった。
「それではそれでな」
「はい、では」
「髑髏天使ね」
魔物からも彼に対して声をかけてきたのである。
「はじめて、と言うべきかしら」
「少なくとも二度も会うつもりはない」
「そうね。それは私も同じよ」
牧村の今の言葉に笑って返す魔物だった。
「貴方とは会うのはこれが最初で最後よ」
「貴様はここで消えることになる」
牧村はその巨大な姿を見上げながら彼に告げた。
「それもついでに言っておく」
「いいわね、自信家で」
「この時代の髑髏天使は特にそうなのですよ」
彼女の前にいる老人がまた言ってみせてきた。
「こうした方でして」
「自信のある人は好きです」
魔物はその老人に対して再び告げた。
「紹介して頂きまことに有り難うございます」
「では。後はお任せしますね」
「はい」
「それでは」
老人はここで姿を消した。後に残ったのは牧村とその魔物だけであった。
両者は対峙をはじめた。まずは魔物から彼に言ってきた。
「髑髏天使になりなさい」
「闘う為にか」
「そうよ。今の貴方には何の興味もないわ」
こう言うのである。
「人間の身体の貴方にはね」
「興味があるのはあくまで髑髏天使としての俺か」
「そうよ」
まさにその
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