第二十六話 座天その十四
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「貴様は姿を消しておけ」
「邪魔だっていうんだね」
「貴様は戦えるか?」
「いいや、無理だよ」
死神にその巨大な目を向けながらの言葉であった。
「だってこの姿だよ。わかるじゃない」
「そういうことだ」
また彼に言葉を返す死神だった。
「だからだ。わかったな」
「うん、それじゃあ」
目玉は言葉で死神の言葉に頷いた。そうしてまるで灯りが消える様にして姿を消してしまった。これで死神は一人に戻ったのであった。
一人に戻るとだ。彼は右手を拳にしてそれを己の胸の前に置いた。するとそこから白い光を発し白いフードのある長衣に身を包み大鎌を持った姿になった。
「これでよし」
言いながらその鎌を右手で前に一閃させた。
それを合図としてだった。美女もまた己の魔物に告げるのだった。
「では私はだ」
「行かれるのですね」
「戦いは見ている」
こうも魔物に告げた。
「だからだ。後はだ」
「わかりました。それでは」
こうして魔神が姿を消した。すると魔物はそのままの姿で死神に向かい合ってきたのであった。その姿を変えるところはなかった。
「貴様の姿はそのままか」
「如何にも」
その通りだというのである。
「これが私の姿だ」
「そうか」
「そしてだ」
その手に持っている槍を死神に突き出してきた。左手には楯がある。
「この槍は全てを貫く」
「全てをか」
「そしてこの楯はだ」
次には楯を見せてきたのだった。
「全てを防ぐのだ」
「最強の槍と楯だな」
「如何にも」
まさにそれだというのである。
「貴様が勝つ可能性はない」
「それはどうかな」
死神は今の魔物の言葉を受けても言葉の自信を変えなかった。
「果たしてそう上手くいくかだ」
「私を倒すというのか」
「そうだ。倒す」
返答は一言であった。
「その魂を冥府に送り届けてやろう」
「言ってくれるな」
「事実を言ったまでだ」
両手で鎌を構えての言葉であった。
「これから起こる事実をだ」
「そして私を倒すのか」
「槍と楯があろうとも」
魔物の誇るその二つのものについても言ってみせる。
「私に効きはしない」
「自信家だな」
魔物はそんな死神の言葉を聞いてまた述べた。
「噂以上の」
「自信ではない」
「では何だというのだ?」
「さっきも言った筈だ」
またこう返してみせたのであった。
「事実を言っているだけだ」
「では。それが事実かどうかだ」
「今から見せよう」
この言葉が合図になった。
「それでいいな」
「来るのだ」
言いながら自分も動く魔物だった。
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