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髑髏天使
第二十六話 座天その十二
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「君はね」
「俺もこんなことを思う時がある」
 こう目玉に応える。
「たまにはな」
「たまにでもそんなことを思うのがやっぱり意外だよ」
 目玉の言葉はそこが変わらなかった。
「案外詩人なんだね」
「詩人か。俺が」
「僕これでも詩が好きなんだよ」
 目玉は今度は自分のことを語ってきた。
「人間の作った詩もね。例えばランボーとかね」
「ランボーをか」
「うん、顔も奇麗な詩人だったね」
 ランボーは肖像画が残されている。それを見れば確かに美男子である。物憂げな美男子として今もそうした面からも人気のある詩人である。
「あの人はね」
「そのランボーが好きなのか」
「そうだよ。もっとも君は」
 牧村を見ながらの言葉だった。
「ランボーとはまた違うけれどね」
「似せるつもりもない」
 今の目玉の言葉にはこの言葉を返すのだった。
「別にな」
「そうだね。まあ似せても似合わないしね」
「その通りだな。この髑髏天使はあの詩人とは違う」
 死神もまた目玉の言葉に応える。
「また違う種類の人間だ」
「そうそう」
「今のところは、だがな」
 今の言葉には何か含むものがあった。牧村もそれに気付きこのことを問おうとした。しかしそれより前に、であった。まずはあの老人が出て来たのであった。
「暫く振りですね」
「貴様か」
「はい、貴方もお元気そうで何よりです」
 顔はにこやかなものであった。その顔で牧村達の前に現われてきたのである。
「お変わりなく」
「貴様もな」
 牧村は今の言葉を受けて老人に返した。
「変わらないようだな」
「我々は変わりませんよ」
 自分だけではないというのだった。
「何もね」
「変わらないのか」
「歳を経ることがありませんので」
 その穏やかでにこやかな笑みで述べてきた。
「ですから」
「そうか。魔神だからか」
「その通りです。神は歳を経ることがありません」
 この時に老人はちらりとだが死神と目玉も見た。そのうえでの言葉であった。
「そして死ぬこともありません」
「神というのは辛いものだな」
「辛いのですか」
「永遠に生きるということは永遠に苦しむことでもある」
 だからだというのである。牧村のこの考えは実に東洋的なものであった。
「死ねばそれから解放されるのだからな」
「ふむ、実に達観した御考えですね」
「生ある者ならば死ぬ」
 普通の生ある存在のことも述べた。
「それは時として救いでもあるのだからな」
「それはその通りですね。それではです」
 老人は今の彼の言葉を受けて。そのうえでこうも言ってきたのであった。
「私はこれから」
「これから。どうするのだ」
「貴方の苦しみを解き放ってあげましょう」
「私もだ」
 そして老人の横にあの美女が
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