第二十六話 座天その十
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彼女も牧村の今の話を聞いて。こう言うのだった。
「最近牧村君って時々」
「変なこと言いますよね」
「ええ」
未久に対しても彼女と同じ表情で答える。
「そうよね。なってしまったより自分でなる方がいいっていうのはね」
「わかるんですか」
「それはね」
わかると未久に答えるのだった。
「そういう意見もあるわ」
「あるんですか」
「あるわ。受身より積極的で」
今の言葉は牧村の言葉と同じだった。
「そういう考えはありだと思うわ」
「あるの」
「まあ何になってしまうかによるけれどね」
「あっ、だったら」
若奈の話からあることがわかった未久だった。
「自分の目指すものになるのがいいってことですか」
「そういうことかしら」
「俺はそういうことは言っていないがそれはいいことだ」
牧村の今の言葉は結果オーライといった類の言葉だった。だがそういう意味では言っていないというのである。しかし今はそうではないという。
「それはな」
「まあアイドルは冗談として」
それは冗談としてであるとした。実際に彼女もアイドルということについては実は真剣に言ってはいなかった。冗談歳として言っていたのである。
「じゃあなりたいものになるわ」
「それがいい」
ここでまた言った牧村だった。
「人がなるものにな」
「人間がね」
未久はまた応えた。
「なるものね」
「俺は今は」
牧村はさらに己の言葉を続けていく。
「何かになっていっている」
「何かになのね」
「そしてそこからまたなる」
「何かに?」
「果てにあるのは何かわからない」
彼はさらに続ける。
「しかし俺もまたなる」
「なってしまうのじゃなくてね」
「なる」
未久と話しているうちにその考えに彼も至ったのだった。
「必ずな」
「そうよね。じゃあ私はまずなるものを探すわ」
「未久ちゃんのなりたいものをね」
「はい。奇麗な女の人には絶対になりますし」
ここではまた冗談を話に入れたのだった。
「それとは別のものになります」
「フライトアテンダント?それとも看護士さん?」
「何かそういうのいいですよね」
若奈の言葉に微笑みになっていた。
「他にも一杯ありますし」
「ええ。何でも探すといいわ」
若奈の笑みは温かいものだった。まさに妹を見るものであった。
「何でもね」
「はい、まずは見つけて」
「そこからなるのね」
「お巡りさんもいいですよね」
何故か制服のものばかりである。
「とにかく何かになります」
「とりあえず高校に入ったら」
「はい?高校に入ったら」
「ウェイトレスはどうかしら」
若奈は何かを期待する笑みを浮かべて言ってきた。
「ウェイトレス。どうかしら」
「ウェイトレスっていいますと」
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