第二十六話 座天その六
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「っていうか何時の間にかってことだけれど」
「片手より両手の方がいい」
牧村は言った。
「剣を使うのはな。一本より二本だ」
「二本の方がなのね」
「そういうことだ。だからだ」
「両利きね。私には無理ね」
未久は言葉を出しながら自分の右手を見るのだった。小さく柔らかい肌のその手をである。
「あんまりにも器用じゃない、それって」
「あら、未久ちゃんも」
若奈はそのコップを拭き続けながら未久に対して言ってきた。
「あれじゃない。体操部じゃない」
「それはそうですけれど」
「じゃあ器用なんじゃないの?身体を動かしながら色々なもの使うじゃない」
「それは新体操ですよ」
少し笑って若奈に返した。
「私は体操ですから」
「少し違うの」
「はい、確かに身体を動かしますけれど」
それは確かだというのだ。実際に体操はかなり身体を動かすスポーツの一つである。だから彼女の身体はかなり均整が取れたものである。
「道具は使わないです、私は」
「そうだったの」
「ですから別に器用だとは」
「身体は柔らかいがな」
牧村が横から妹に言ってきた。
「それもかなりな」
「まあね」
妹も兄のその言葉に頷いた。
「身体の柔らかさには自信があるわよ」
「それも重要なことだ」
こうも言うのだった。
「スポーツにはな」
「お兄ちゃん柔軟もやってるわね」
このことも思い出した未久だった。
「やっぱりあれ?身体を柔らかくする為よね」
「いざという時に怪我をしない」
身体が柔らかければということである。
「身体が柔らかければな」
「けれどお兄ちゃんって」
妹はここで笑ってその兄に言うのだった。
「前屈やって手がやっと足につく位じゃない」
「あっ、そうよね」
若奈もそのことを思い出して話に入って来た。その手は代わらずコップを拭き続けている。
「牧村君って足が長いから」
「あれっ、あれって足が長いからなんですか」
「当然よ。足が長いとやっぱりつきにくいのよ」
そうだというのである。
「だからね。それはね」
「身体の硬さと関係ないんですか」
「そうなのよ。未久ちゃんはまあ体操してるから特別として」
その柔軟さはまた別格だというのである。
「牧村君は普通に身体柔らかいわよ」
「そうだったんですか」
言われてはじめてそれに気付いた未久だった。
「ずっと硬いんだって思って見てましたけれど」
「ストレッチを毎日していれば柔らかくなる」
牧村はまた紅茶を口に含んだうえで述べた。
「自然とな」
「それでも硬いままだって思ってたわよ」
兄に対しては実に容赦のないままの妹だった。
「それが違ったのね」
「だから身体の差ってあるじゃない」
若奈の言葉は完全にマネージャーのそ
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