第二十六話 座天その四
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「優しくね」
「全く」
若奈の援軍を得て攻勢を強めてきた未久に対してこう言うしかできなくなった牧村であった。その表情も普段より憮然としたものになっている。
そうしてその顔でカウンターに座る。未久の隣にである。
「それでだ」
「何?」
「何を注文するつもりだ」
「紅茶よ」
にこりと笑って兄に告げる。彼はいつも見ているので気にしていないが赤いミニスカートから見える素足が実にいい。白く形もいい実に見事な脚である。
「それを飲みに来たのよ」
「それだけか」
「まあお菓子もね」
その笑みのままこうも言ってきた。
「頼むつもりだけれど」
「じゃあ何がいいのかしら」
「ティラミス」
彼女が若奈に告げたのはそれだった。
「ティラミス下さい」
「わかったわ。じゃあティラミスをね」
「はい、御願いします」
「それではだ」
それを聞いた牧村もまた。若奈に顔を向けて言うのだった。
「俺も紅茶とティラミスをだ」
「わかったわ」
微笑んで彼の言葉に頷く若奈だった。
「じゃあ紅茶とティラミスを二つずつね」
「勘定は一つで頼む」
こうも彼女に告げるのだった。
「そうしてくれ」
「あれっ、何でなの?」
妹は兄が勘定を一つにしてきたのを聞いて彼に顔を向けて問うた。
「お勘定を一つって」
「御前が支払うことはない」
だからだというのである。
「俺が一緒にいる場合はだ」
「私お金持ってるけれど」
「それでもだ。兄がいてそれで妹が支払うことはない」
彼は言うのだった。
「その必要はない」
「だからなの」
「わかったらそのままでいることだ」
そしてだった。さらに言うのである。
「いいな」
「とりあえずおごってくれるのね」
「そう考えるのなら考えていていい」
「それじゃあ」
兄のその言葉に納得して頷く未久だった。
「そう考えさせてもらうわ。それにしても」
「今度は何だ」
「お兄ちゃん運がいいわよ」
微笑んで兄に言ってきた言葉である。
「とてもね。運がいいわよ」
「何故俺が運がいいのだ」
そう言われても全く見当がつかない。牧村は表情を変えずその顔も前を向いたままにしてそのうえで彼女に言葉だけで問うた。
「初耳だが」
「だって私が横にいるのよ」
だからだというのである。
「運がいいじゃない。こんな可愛い娘が横にいるなんて」
「そう思ったことは一度もない」
実に素っ気無く返した牧村だった。
「一度もな」
「あら、言うわね」
兄の今の言葉に口を膨らませたふりをしてみせた。唇も少し尖らせてみている。しかしそれが芝居であるのはすぐにわかることだった。
「私これでも街とか歩いていたらスカウト受けるのよ」
「世の中人を見る目のない人間も多い」
やはり
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