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髑髏天使
第二十五話 魔竜その二十二
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「まことにな。賭けだったな」
「賭けてでもやらなければならない時がある」
 死神は落ち着きそのものの声で述べた。
「戦いにおいて時にはな」
「確かにな、貴様はそれに勝った」
「勝ったから生き残った」
「その通りだ。そして俺は敗れた」
 魔物は己のことも言った。
「それも認めよう」
「それではだ」
「うむ。さらばだ」
 こうして巨人は炎の中に消えた。死神は闘いに勝ったのだ。
 だが彼はあるものを観ていた。それはもう一つの闘いであった。
 黒と紫が複雑に蠢きながら絡み合う世界だった。髑髏天使はその中にいた。その世界の中で夢魔と対峙し続けていたのである。
「うふふ、ここに来たからには貴方は終わりよ」
「ここは夢の世界だというのだな」
「そうよ。悪夢の世界よ」
 まさにその世界だというのである。
「この世界こそがね」
「そしてだ」
 髑髏天使は彼女の言葉を先読みして言ってみせた。
「この世界でこそ貴様の力が全て出されるのだな」
「そうよ」
 まさにそうだというのであった。
「その通りよ。私の世界だから」
「成程な」
 それを聞いてまずは頷く髑髏天使だった。
「だからこそ俺を倒せるというのだな」
「そういうことよ。話はわかったわね」
「しかし貴様自身は動く気配がない」
 彼が今度言ったのはこのことだった。
「ということはだ」
「私の作り出した夢の世界のものと」
 言っている側からだった。何か奇怪な腕が髑髏天使に襲い掛かってきた。
 髑髏天使はまずそれをかわした。そのうえで魔物に問う。
「こういったもので俺を倒すというのだな」
「まだあるわよ」
 魔物のその少女の顔が微笑んだ。するとだった。
 彼女の周りに無数の異形の者達が姿を現わしてきた。
 人と獣、魚と植物、とにかくあらゆるものが歪に入り混じった不気味な者達が出て来た。そのうえで髑髏天使に襲い掛かって来たのである。彼はそれを見てすぐに主天使になった。
「力を最大限に出すのね」
「そうでなくては倒せる相手ではあるまい」
 早速その魔物のうちの一体の胸を右手の剣で貫いての言葉である。
「そうだな」
「その通りでしょうね。私の世界でのことだから」
「貴様の世界であるならばだ」
 次の一体は切り裂いて倒した。だが次から次に来る。
 その彼等を切り伏せながらだ。髑髏天使は言っていくのであった。
「こうして全力で闘わなければ生き残れはしない」
「そうね。ただ」
「ただ。何だ」
「それだけで生き残れるかしら」
 酷薄な、それでいて楽しむ笑みでの言葉であった。
「果たしてそれだけで」
「どういうことだ?」
「何度も言うけれどここは私の世界よ」
 またこのことを言ってきた魔物だった。
「何もかもを生み出せるのよ」

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