第二十五話 魔竜その十九
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「それでいいな」
「私はあの夢魔とは違う」
先程の少女のことを話に出してみせてきた。
「何処でも闘うことができる」
「ではいいな」
「来い」
あらためて魔物に告げたのだった。
「闘うとしよう」
「それではだ」
魔物は彼の言葉を受けてだ。その方足で高々とはねてきた。それは巨体からは想像もできないまでに俊敏な動きであった。
「跳んだか」
「行かせてもらう」
その方足が彼の頭上こ急降下してきた。それで踏み潰そうというのだ。
「この足が貴様が最後に見たものになる」
「さて、それはどうか」
だが死神はその彼にこう返したのだった。
「それで私を倒せるのか」
「かわすというのだな」
「簡単なことだ」
死神は一言言っただけであった。
「それはな」
「方。ではどうやってかわすのだ?」
「こうするだけだ」
こう言ってであった。姿を消した。完全にである。
「むっ!?」
「単純なものだ」
死神の声だけが聞こえてきた。
「その動きがわかっていればな。こうすればいいだけだからな」
「かわすことがか」
「その程度の攻撃では私を倒すことはできない」
急降下してくる彼に対してさらに言ってみせたのであった。
「残念だがな」
「そうか」
しかしそれを言われても落ち着いた声を出す魔物であった。
「姿を消してそう来たか」
「無論貴様もこれで終わりではあるまい」
死神はここでこうも言ってみせたのであった。
「そうだな。終わりではないな」
「当然のこと」
今まさに地面にその一本足を着けんとするところで。不敵に言ってみせたのであった。
「それはな」
「ではどうするつもりなのだ?」
「見るがいい」
その瞬間だった。死神が消えたその場所に一本足を踏みつけた。それによりそこのコンクリートを粉々に砕き大きな穴を開ける。そのうえでだった。
再び跳ね飛ぶがそれと共に身体が幾つにも分かれたのだ。分身であった。
「貴様もまたそれを使えるのか」
「ただ大きいだけではない」
複数になってからも跳ねながら声だけの死神に対して告げる。
「そしてだ」
「そして?」
「貴様は確かに姿を消した」
それはわかっていることであった。既に。
「しかしだ。実体を消したわけではないな」
「むう」
「その言葉が何よりの証拠だ」
複数の口から同時に出した言葉であった。
「実体は見えないだけで存在している」
「それがわかるか」
「そう、貴様は何処かにいるのだ」
魔物はそれはわかっているのだった。そうしてであった。
「ならばだ。こうして複数に分かれてだ」
「何処かにいる私を踏み潰すというのだな」
「さて。かわせるか」
言いながらまたコンクリートを踏み砕くのであった。
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