第二十五話 魔竜その十三
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「やはり」
「ではこれで」
またカードを出す彼だった。
「いいのだな」
「ええ、それで」
店員はまた彼に応えた。
「御願いします」
「わかった。それではこれで済ませるとしよう」
「はい」
「ではダイアは」
「あっ、お返しします」
謙虚な態度で彼に返すのだった。実際に手に取ってみせて。
「どうぞ」
「遠慮することはないのだがな」
「いえ、遠慮します」
店員の態度は遠慮から恐縮になっていた。
「これではチップという域ではありませんので」
「そうか」
「はい、ですから」
いいという店員だった。
「お返しします」
「わかった」
それ以上は聞かない彼であった。
「それでいい」
「ええ。それではまた」
店員が別れの挨拶をしてそれで終わった。死神は店を出るとだった。そのタキシードを忽ちのうちにあの黒いライダースーツに変えたのであった。
「さて」
「これから行くんだよね」
店の玄関のところでまた、であった。目玉が彼の上に出て来て声をかけてきたのだ。
「魔神のところにね」
「私が動かなくとも向こうから出向いて来るだろうがな」
「まあそうだろうね」
目玉もそれは少し読んでいるようであった。
「そういった連中だしね」
「だが今はだ」
死神は顔を正面に向けて言った。
「私の方から出向く」
「そうするんだね」
「貴様はついて来なくていいのだがな」
死神はここまで話したうえで目玉に顔を向けた。
「別にな」
「嫌だなあ、そんなこと言うの?」
目玉は声を笑わせて彼に返した。
「長い付き合いじゃない。水臭いよ」
「別に付き合っているつもりはない」
親しげな目玉に対して死神は素っ気無いものだった。
「私としてはな」
「そうかな。僕は違うけれど」
「少なくとも私はそうだ。それにだ」
あらためて彼に言うのだった。
「私がついて来るなと言っても来るのだな」
「いつものことじゃない」
笑っていたが茶化すものもそこにはあった。軽く。
「それも」
「なら好きにするといい」
素っ気無く返した言葉だった。
「それでな」
「あれ、じゃあいいんだ」
「私は相手にしない」
ここでも言葉は実に素っ気無い。
「それだけだからな」
「まあそれでいいよ。それじゃあ」
「行くのだな」
「うん、行こう」
こうして死神は目玉と共に何処かへと向かった。ハーレーが空を飛ぶ様に進む。その頃牧村は。スタジアムの前においてあの紳士と対峙していた。
「さて、ここで私が姿を現わしたということはだ」
「遊びに来たわけではないな」
「遊びと言えば遊びだ」
笑いながらこうも言ってみせてきた。
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