第二十五話 魔竜その十一
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「以前と比べるとな」
「別の存在みたいだね」
「人を食らう魔神もいたのだがな」
「それもないんだ」
「人の食べるものを食べるようになってきている」
このことは彼も知っていた。何故なら彼等が人を食らえばその魂が冥界に旅立ち彼がそれを送ることもあるからである。だからそれはわかるのだ。
「どうやらな」
「そして性格も何か楽しんでるみたいだね」
「戦いを楽しんでいるな」
それをだというのだ。
「それとだ」
「それと?」
「人の世界での生活そのものをだ」
「楽しんでるんだ」
「かつての彼等の様にな」
かつてという言葉を聞いて。目玉はすぐにこう返した。その目の光を考えるものにさせえ。
「っていうと妖怪だった時みたいにだね」
「そうだ。その時の様にな」
「魔物なのにかつての妖怪みたいになんだ」
「どうやらな。しかしあの者達が魔神であることは」
「それは変わらないだろうね」
それについてはこう述べた目玉だった。
「それはね」
「そうだな。そしてだ」
「うん」
「私も。どうやらな」
「そうだね」
死神の今の言葉に頷いた目玉だった。
「君も楽しむ様になってるね。今がそうじゃないか」
「今まではこんなことはなかった」
死神は食事を進めながら述べ続ける。その動きは何処か神らしい落ち着いたものをそこに漂わせていた。そのうえで食べているのだった。
「酒もだ」
「ワインは飲んだっけ」
「飲んでいたが不死の酒を最も愛していた」
「今は?」
「人の世界の酒もいいものだ」
嗜好がそちらにも及んだということだった。
「飲んでみるとな」
「ふうん、そんなにいいんだ」
「貴様には関係のないことだがな」
「残念だけれどね」
実際に声はその感情を込めていた。
「それはね」
「そして美味だ」
死神は味についても述べた。
「人の世界のものもな」
「人間については殆ど考えたことがなかったけれどね」
「私もだ」
死神はまた言った。その紅の酒を飲みながら。葡萄酒の濃厚な甘い退廃さえ感じさせるその香りも楽しみながら飲んでいた。
「それはな」
「けれど今は?」
「興味を持っている人間はいる」
「髑髏天使だね」
「そうだ。あの男」
己の脳裏の中に牧村の姿を思い浮かべる。そのうえでの言葉だ。
「これからどうなるかだが」
「もう主天使になっているんだっけ」
「このままいけばだ」
「あの域にまでなるかな」
目玉はまた言ってきた。
「果たして」
「有り得るな。そして」
「あの存在になるんだね」
目玉の目の光が変わっていた。思慮深いものに。
「そうしてだね」
「その時はだ」
「君が相手をする。そうだね」
「そのつもりだ。私の今のやるべきことは魔物の魂を刈る」
「うん
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