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髑髏天使
第二十五話 魔竜その十

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「今私が食べているものの方が美味だ」
「美味しいんだ」
「調理の仕方が格段に進歩している」
 まずはそれだという。
「それに料理の周りにある技術もだ。違ってきている」
「それもなんだね」
「味付けもだ。何もかもが進歩しているからこそ」
「美味しくなっているんだね」
「そういうことだ。美味いものだ」
 彼ははっきりと美味いと言うのだった。
「この味はな」
「何か羨ましいね」
 目玉は彼のそうした言葉を聞いて述べてきた。
「僕は何かを食べることはできないからね」
「貴様はそうだな」
「何も食べなくても生きていけるけれど」
 こう言ってから。
「食べることもできないからね」
「食事ということは貴様とは無縁だからな」
「そういうこと。けれど君は食べられる」
「食べる必要がなくともな」
「それが羨ましいよ」
 実際にその感情を言葉に出す目玉であった。
「食べられることがね」
「味わうこと自体が楽しいものだ」
「味ねえ」
「貴様はそれも感じられないのだな」
「そうなんだよね。残念だよ」
 目には表情は無い。しかしそこから出される光がそれを述べていた。そして翼の羽ばたきにもいささか元気がなくなってしまっていた。
「全くね」
「それでだが」
「うん」
「何の用で来たのだ」
 食べながら彼に問うた死神だった。
「今私の前に来たのは。何故だ」
「情報を持って来たんだ」
「魔物のか」
「その神々のだよ」
 つまり魔神のものだというのである。
「また一柱来るよ」
「そうか。またか」
「今度はキリムがね」
 その名前も出したのだった。
「来たよ」
「あいつがか」
 死神はその名前を聞いてまずはその目を動かした。
「密林から出て来たか」
「もうこの国に来ているよ」
「それを知っているのは」
「まずは僕と」
 目玉自身のことである。
「今話した君だけだよ」
「仲間の魔神達はまだ知らないのか」
「うん、まだね」
 知らないというのであった。
「知らないよ。あくまで僕達だけだよ」
「今のところはか」
「他の魔神達は何処か別の場所にいるみたいだね」
 魔神はまた述べたのだった。
「どうやらね」
「おそらくまた人の世界での暮らしを楽しんでいるのだろう」
 死神は彼等の動きについてこう予想したのだった。
「どうせな」
「彼等もなんだ」
 目玉はそれを聞いて少し意外そうな声を出した。
「それはまた」
「面白いか」
「変わったね、彼等も」
 だからだというのだった。
「前はそれこそ戦いのことしか考えていなかったのに」
「そうだな。随分と変わったものだな」
 話をしていてだった。死神もそのことに気付いたのだ。
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