第二十五話 魔竜その九
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「人を超えるとある」
「人をか」
「うむ」
古文書に目を向けたまま牧村の問いに答えるのだった。
「そうあるぞ」
「面白い言葉だな」
それを聞いてこう言った牧村だった。
「それはまた」
「そう思うのか」
「話としてはな」
面白いというのである。
「それでどうなるのだ」
「書かれておるのはここまでじゃ」
博士の言葉は申し訳なさそうであると共に残念そうでもあった。
「この古文書にはのう」
「そこまでか」
「そうじゃ」
こう言って古文書を閉じたのであった。それから紐でくくる。
そうしてから。また彼に対して言ってきた。
「それでじゃが」
「話は終わったな」
「髑髏天使に関しては今はのう」
終わったというのであった。
「さて、今日はこれからどうするのじゃ」
「いつも通りだ」
こう答える牧村だった。
「またトレーニングに向かう」
「そうするのか」
「闘いに備えてだ」
「では励むことじゃな」
その牧村に対して告げた博士だった。
「よくのう」
「そうさせてもらう。それではだ」
ここで壁から背を離した牧村だった。そのうえで扉に向かう。
「また来る」
「待ってるからね」
「またね」
妖怪達がその背に声をかける。彼はそれを受けながら今は部屋を後にした。
死神は今は一人でいた。一人であるレストランの個室にいた。王宮を思わせる豪奢な部屋だ。
床はビロードの絨毯が敷かれそしてテーブルにかけてある掛け物は白いシルクである。食器は青と白のオーストリアのものと思われる皿でグラスは水晶だ。フォークとナイフは銀である。その豪奢なものに囲まれた彼は今は黒いタキシードを着てそのうえでこれまた立派な食事を採っていた。
その彼の前にあるものが来た。それは目であった。
人のものを思わせる子供の頭程の大きさのそれは黒い球体からその目を見せていた。そして左右に羽根が生えておりそれで宙を飛んでいた。そこから彼に対して声をかけていた。
「珍しいね」
「珍しいとは?」
「君がそんな食事を採るなんてね」
そのことを言ってきたのであった。
「とてもね」
「珍しいというのか」
「うん、凄く」
目玉はまた彼に言ってきた。
「だって神だから食べなくてもいいじゃない」
「確かにな」
死神もそれは認めた。しかしそれでも食べることは止めなかった。
「それはその通りだ」
「けれど何で食べるのかな」
「興味を持ったからだ」
死神の返答はこれであった。
「この時代の人の食事にな」
「ふうん、それでなの」
「料理の外観は。そうだな」
死神は食べながら述べた。今食べているのは羊のすね肉を焼いたものであった。それを香料で薄く味付けしたものである。それをフォークとナイフで上品に食べて
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