第二十五話 魔竜その八
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「まだじゃ」
「まだか」
「もうではないぞ。まだじゃ」
今の言葉はいささか言葉遊びめいているものだった。なお博士は文学博士でもある。文系の博士号も理系の博士号もどちらも習得しているのである。
「主天使になったとはいえじゃ」
「わかっていることは微々たるものか」
「それこそあれじゃ」
ここでまたこの言葉を出すのだった。
「大海の中の匙一杯程度じゃな」
「その程度か」
「とにかく色々な文献を見ておるがのう」
博士の言葉は半ばぼやきになっていた。
「それでもわかっておることはじゃ」
「殆どないか」
「そうじゃ。特に」
「特に?」
「これはわしの勘に過ぎんぞ」
こう前置きしてから言うのだった。
「どうも一番大事なことがわかっておらんのう」
「最も重要なことがか」
「そんな気がするのじゃ」
こう言うのである。
「何かな。確かなことは言えんがのう」
「そうなのか」
「それが何かさえもわからん」
博士の言葉は明瞭だったが目指すものは不明瞭だった。
「全くのう」
「何か厄介だよね」
「本当にね」
妖怪達はそれを聞いて言い合った。
「僕達も髑髏天使については殆ど知らないけれど」
「五十年に一度出て来て魔物を倒すってこと以外にはね」
「それ以外知らなかったのか」
牧村はそれを聞いて彼等に問い返した。
「あんた達も」
「そうなんだよね」
「大天使とかになるのも知らなかったよ」
そうしたことも知らなかったのである。彼等にしてもだ。
「それで今主天使になったけれど」
「博士と同じで」
「殆ど知らないんだ」
彼等にしてもそうなのだった。そして博士がここでまた言うのであった。
「それでじゃ」
「それで?」
「今も調べておるがじゃ」
博士はまた古文書を開いていた。今度は日本のものらしい。
「これは奈良時代のものじゃ」
「奈良時代か」
「平城京跡で見つかったものじゃよ」
その頃のものであるという。しかも見つかったのはその時の都だったのだ。
「残された階級はあと三つじゃ」
「主天使のだな」
「まずは座天使じゃ」
その三つのうちの最初はそれだった。
「これは天使の力とあるのう」
「髑髏天使なら当然のことではないのか」
「わしもそう思うのじゃが」
首を傾げながらの今の博士の言葉だった。
「何か引っ掛かる書き方じゃな」
「そうだな」
「ふむ」
博士は古文書を読み続けている。見ればその文字は漢字である。この時代の日本にはまだ平仮名も片仮名もない。漢文で書かれているのである。
「そして残る二つはじゃ」
「どうなのだ」
「どうも特別なものらしいのう」
その漢文の古文書を見ながらの言葉だった。
「天使の力じゃが神に近付くとある」
「神に
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