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髑髏天使
第二十五話 魔竜その三
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「それどことか結核もですね」
「なおるじゃな」
「それはまた凄いな」
「ですからと思って」
 それでだというろく子だった。しかしここで博士はいぶかしむ顔で言うのだった。
「わしは結核にもかかっておらんが」
「俺も今は病気は」
「その病気をはねつける身体にしてくれますよ」
 そうだというのだった。
「もうね。当分の間は」
「よくそんな物凄いお茶があるものじゃな」
 博士はそれを聞いてまた述べた。
「そこまでのお茶は聞いたことがないぞ」
「そうでしょうね。このお茶はですね」
「このお茶は?」
「私達のお茶ですから」
 妖怪達の茶だというのである。
「それも秘伝のなんですよ」
「そんなものがあったのか」
 博士はその言葉を聞いて目を少し丸くさせた。
「初耳じゃが」
「博士でも知らないことがあるのか」
「当然じゃ」
 それは当然だと牧村に述べた。
「人が知っておることなぞそれこそ大海の中の匙一杯分程度じゃよ」
「知らないことの方が圧倒的に多いか」
「わしも同じじゃ」
 いささか謙遜めいた言葉であった。
「わしにしても知らんことが実に多いのじゃよ」
「そうなのか」
「左様。じゃからこのお茶にしてもじゃ」
「知らなかったのだな」
「こんなものもあったのじゃな」
 あらためて言ったのだった。
「全く。勉強になったわ」
「それは何よりだが」
「しかし。それでも苦いのう」
 また苦さの話をした。
「蜂蜜を入れてもまだ苦いぞ」
「そうですか?それでもかなり入れてるじゃないですか」
「ようやく飲めるようになったわ」
 その域だというのである。
「しかし。飲めばじゃな」
「はい。身体にもかなりいいです」
 そうだというのである。
「ですから」
「これを飲めば身体の動きも変わるか」
「少なくとも体力はつきますよ」
 牧村の今の言葉にも応えた。
「もうそれだけで」
「では飲ませてもらおう」
「そうして頂くと何よりです」
 ろく子はまた飲みはじめた彼を見つつ笑顔になっていた。
「出す方も嬉しいです」
「それでだ」
 ここまで話してまた問う牧村だった。
「これを作ったのは誰だ」
「作った妖怪ですか」
「そうだ。博士も知らないような妖怪漢方茶をだ」
 これは牧村の造語である。今咄嗟に作ったのである。
「作ったのは誰だ」
「わしじゃが」
 こう言って名乗りをあげてきたのは全身毛だらけの大きな猿に見える妖怪だった。その妖怪の名は。
「さとりか」
「そうじゃよ、わしなのじゃよ」
 その妖怪さとりは笑いながら彼に言ってきたのだった。
「わしが作った茶じゃよ」
「相手の考えが何でもわかるだけではなかったのか」
「わかるから作られるのじゃよ」
 そうだからだという
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