第二十五話 魔竜その一
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髑髏天使 第二十五話
魔竜
その闘いは一瞬で終わった。しかしその後の話はそうはいかなかった。
牧村はまた博士の研究室にいた。そこでその闘いのことを話すのだった。
「ふむ、やはり出て来たか」
「ああ」
「その人を食らう魔物がのう」
いつもの様に壁にもたれかかって立っている牧村と話をする博士だった。そしてその周りにはこれまたいつも通り妖怪達がたむろして遊んだり飲み食いをしたりしている。
中には将棋をしている者達もいる。かなりくつろいでいる。
「よし、王手だ」
「何のっ」
その将棋のやり取りの声を聞きながらであった。博士と牧村は話をしていた。
「ムングワといった」
「ムングワか」
「知っているのか」
「タンザニアにおった魔物じゃな」
それだと述べる博士だった。
「二十世紀の前期に出て人を殺しておった。何か豹みたいな姿をしておったらしいがのう」
「豹か。そうだな」
魔物のその顔を思い出したうえで述べる牧村だった。
「あれはそうした顔だったな」
「それにチョンチョニーじゃったか」
「死神が闘った魔物はな」
「ジャガーの姿をしておったのじゃな」
そのことはもう牧村から聞いている博士であった。
「それもじゃ。人を食うのじゃよ」
「あの魔物もか」
「そうじゃ。どちらもな」
両方共だったというのである。
「人を食らう魔物だったのじゃよ」
「その目は確かに赤かったな」
「それが何よりの証拠じゃよ」
目がまさに証だというのである。
「目がのう」
「目がか」
「前に言った通りじゃ。人を食らう魔物は目が赤い」
博士はここでもそのことを牧村に対して話した。
「そしてそれは人も同じなのじゃよ」
「人が人を食うのか」
「知っておるじゃよ」
このことを話してからまた問い返してみせてきた。
「このことはじゃ。知っておるじゃろ」
「中国、そして欧州でか」
「歴史を探せば結構ある話じゃ」
博士はこうまで語った。そうした話はよくあるのだと。
「例えばじゃ。唐代末期のじゃ」
「黄巣の乱か」
中国の長い歴史においても最大の叛乱である。塩の密売商人、所謂塩賊である黄巣が起こした叛乱であり唐王朝に完全に止めをさしてしまったものである。
「あれで人を食った話があったな」
「それこそ部隊単位でじゃ。恐ろしいことになったのじゃ」
「それもそのうちの一つか」
「あとは十字軍もじゃな」
この時もかなり食べられているのである。十字軍の兵士達がイスラム教徒を殺しそのうえでその肉を貪っていたのである。
「あれもかなり食っておる」
「人としてか」
「いや、それでもう人ではなくなっておる」
だが博士はそれを聞いて
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