第二十四話 妖異その二十一
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「こんな訳わからねえ本持っててもな」
「しかし。あの博士」
「よくこんな本持ってたな」
「しかもわかるのかね、やっぱり」
「そうじゃねえの?」
こう話されていくのだった。
「あの博士確かに奇人変人だけれどな」
「何年生きてるかわからねえけれどな」
「学識あるのは間違いないしな」
それは確かだった。博士の学識はそれこそ世界屈指である。伊達に多くの博士号を持っているわけでも百年以上生きているわけでもないのである。
「ぼけてもないしな」
「っていうか鋭いしな」
しかも頭の方は全く老いてはいないのだった。
「じゃあ読めるか」
「こんな本もな」
「いや、それでも難しいと言っていた」
ここでまた述べてきた牧村だった。
「博士でもだ。この本はだ」
「そうか。難しいか」
「まあそうだろうな」
「わかりにくく書いているようにしか見えないからな」
「だよな」
日本の知識人は最近までそうした何を書いているのか何が言いたいのか理解するのが実に困難なものを有り難がる傾向があった。その為その吉本隆明にしろ大江健三郎にしろ敬われたのである。だがそれが正しいか、誠に敬うべきかというとそうとは限らないのである。
「こんなの読んでもな」
「どうにもならないからな」
「だから返すんだな」
「そうだ。俺にとっては読む価値のないものだ」
こうまで言い切る牧村だった。
「だから返す」
「よし、じゃあそれは返して」
「とりあえずコーヒーでも飲もうぜ」
「何飲む?」
無意味な本の話はこれで終わってそのうえでコーヒーという意義のあるものについての話になった。確かにこちらの方が意味のあるものである。
「俺はアメリカンにするか」
「俺はカプチーノな」
「牧村、御前は?」
「何にするんだ?」
「ウィンナーにするか」
彼はそれだというのだった。
「ウィンナーがいい。コーヒーならな」
「ああ、御前そういえば紅茶派だったな」
「それでも最近飲むんだな」
「少し舌が変わったか」
自分でこんなことを言う牧村だった。
「コーヒーも飲むようになってきたか。いや、前からか」
「味には五月蝿いよな」
「そうだな」
そのうえでこのことも話された。
「特に甘いものにな」
「だからウィンナーか」
「それか」
「いいものだ」
そのウィンナーコーヒーに対する言葉である。
「飲んでいればそれだけで落ち着く」
「またそれはかなりだよな」
「そうだよな」
皆今の彼の言葉を聞いてまた言ったのだった。
「コーヒーとか紅茶いつも飲んでるしな」
「まあ美味いしな」
「癖になるんだよな」
「だよなあ」
それが茶やコーヒーである。それはカフェインのせいであるがそれ以上にその味が人々に愛されているからに他ならな
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