第二十四話 妖異その十九
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「それでテキストあるか?」
「あれだろ?前の講義で教授が言ってたな」
「あれだよな」
「これか」
牧村は彼等の言葉を聞きながらある本を出してきた。やたらと分厚くそのうえかなり難しい言葉がその中に満ちている。そんな本であった。
「ええと、現代における考古学の実態か」
「何か見ただけで難しそうだよな」
「全くだよ」
仲間達は牧村の出したその本を彼の周りに集まって覗きながら述べた。
「こんな本よく持ってたな」
「五千円もするしな」
「高過ぎだろ、これ」
その辞書に匹敵する分厚さの本のカバーも見ての言葉である。そこには消費税を抜いてそのうえで五千円と書かれているのである。
「こんな本買ったのか?」
「それにしちゃ新しいよな」
「借りたのかよ」
「そうだ。借りた」
まさにそうしたと答える牧村だった。
「大和田教授からな」
「ああ、悪魔博士か」
「あの人からか」
「そうだ、あの教授からだ」
借りたと。事実をそのまま述べたのであった。
「借りた」
「あの博士そんな本も持ってたのかよ」
「何でも持ってるんだな、あの人」
「この本どころじゃないんだろうな」
彼等も博士のことはよく知っていた。ただしあまりいい意味ではない。博士はこの八条大学においても屈指の奇人として有名なのである。
「それこそネクロノミコンとかあってもな」
「ああ、全然おかしくないよな」
「あの研究室の本棚幾つあるんだろうな」
「その中にあった一冊だ」
それだというのである。
「これはな」
「それで内容だけれどよ」
「何て書いてあるんだよ、これ」
「意味わかんねえよ」
仲間達はここで一斉に眉を顰めさせた。彼等にとってその本に書かれている内容は全く意味不明な複雑怪奇なものであった。
「ええと、現代はわかるな」
「何だよコペルニクスって」
「何でそんなのが考古学に出て来るんだ?」
「マルクスまで出るしよ」
「マルクス史観か?」
「何かそれっぽいな」
目を顰めさせ次々に言うのであった。
「何かそれが考古学を歪めたのか」
「ここでコペルニクス的変換をか」
「そう書いてあるんだな」
とりあえず何を書いているかはわかったのだった。
「しかしそれにしても」
「わかりにくい文章だな」
「一体何が言いたいんだよ、これ」
「悪文だな」
本を開いている牧村の言葉であった。
「明らかにな」
「だよな。読みにくいぜこれ」
「抽象的!?もっと違うだろ」
「専門用語もいじくってるしよ」
だからわからないというのであった。とにかく彼等はその文章が何を書いてあるのか何を言いたいのか全く理解出来なかった。
「小林秀雄だったら知識があったらな」
「ああ、あれはわかるよな」
「だよな」
小林秀雄は読
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