第二十四話 妖異その十三
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「それでそこまで運動して食べてること自体がね」
「そもそも有り得ないし」
「よく動くからよく食べられるようになるのじゃ」
一つの行動がまた別のものを動かすということだった。
「だからいいのじゃよ」
「まあそれで健康になってるんだし」
「いいかな」
「だよね」
妖怪達はそれで納得することにした。そしてそのうえで、であった。
「それじゃあ牧村さん」
「もう一つあるけれど」
彼にまたその石榴のケーキを出しての言葉であった。
「どうかな」
「食べる?」
「そうだな」
彼もその妖怪達の言葉に頷いてみせたのだった。
「それでは貰うか」
「そうだよ。食べないとね」
「博士みたいに長生きできないからね」
「長生きの問題じゃない」
彼にとってはだった。違うというのである。
「エネルギーの為だ」
「ああ、身体動かしてだね」
「それで戦う為にだよね」
「そうだ」
まさにその為だった。それ以外の何でもなかった。
「エネルギーを貰う」
「そうは言っても味わってくれるしね」
「プレゼントする方にとっても有り難いよ」
「全く」
妖怪達はこうもそれぞれ言った。
「食べてくれるっていうこと自体がね」
「嬉しいんだよね」
「喜んで食べさせてもらっている」
彼等のその言葉に牧村も応える。
「明日食べられない可能性もあるのだからな」
「まあそれはね」
「否定できないものがあるけれど」
髑髏天使ならば。戦いの中にその身を置いているならばそれでも当然のことだった。それが牧村の住んでいる世界なのである。
「まあね。それでもだよ」
「食べたらいいよね」
こう話していくのだった。それが終わってから牧村は大学を出てそのうえでキャンバスを出る。サイドカーでハイウェイに出た。そこで、であった。
目の前に出て来たのはあの黒人だった。サイドカーで進む彼の横にバイクで出て来た。漆黒のスーツに漆黒のヘルメットを被っている。一見すると顔はわからない。
しかしだった。彼はその声で教えてきたのである。自分が誰かを。
「暫く振りだな」
「貴様か」
「この時代は面白いものがあるな」
バイクのことを言うのである。
「これはバイクだったな」
「そうだ。バイクだ」
牧村は彼の方を見ない。正面を見たままの返答だった。
「これがバイクだ」
「歩くのもいいがこうして運転するのもいい」
彼は言った。
「楽しいものがある」
「今貴様は楽しみの為だけにここにいるのか?」
牧村は正面を見たまままた彼に声をかけた。
「そうなのか。違うのか」
「違うと思わない方がおかしい話だ」
黒人もまた正面を向いている。お互いを見ないままの言葉のやり取りが続けられる。
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