第二十四話 妖異その十一
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「どう?これ」
「食べる?」
「石榴のケーキか」
牧村はそのケーキを見て目を動かした。
「美味いのか、それは」
「美味しいよ」
「珍しいしね」
そのケーキは差し出したままであった。その紅いケーキをである。
「だからどうかな、このケーキ」
「食べる?どうするの?」
「そうだな。貰おうか」
牧村も彼等のその言葉を受けて頷いたのだった。そうして実際にそのケーキを食べるとだった。確かに美味いものであった。
石榴の甘酸っぱさがケーキによく出ていた。それがスポンジと絶妙に合わさりクリームとも合っていた。不思議なまでにである。
「美味いな」
「そう?よかった」
「これも山月堂のやつでね」
「またあの店なんだな」
最近牧村がよく食べるその店のものである。それで言葉に出した。
「石榴はケーキには難しいと思うが」
「そうだよね。普通に考えたらね」
「よくこんな味が出せるよ」
妖怪達もここでさらに話すのであった。
「石榴をただ使ってるだけじゃないよね」
「かなり工夫してるし」
「それが凄いよ」
「石榴のジュースは飲んだことがあるがな」
牧村はふとこんなことを言葉に出した。
「だが。それでもこれは」
「いいでしょ、本当に」
「美味しいよね」
「しかし。何故石榴なんだ」
牧村は食べたうえでこれが不思議なものに思うのだった。
「石榴のケーキが」
「いや、たまたまだけれどね」
「今日お店に行ったらそこにあったんだよ」
こう話すのだった。
「お店にね」
「何か試作メニューってことでね」
「試作か」
「ふむ。石榴じゃな」
ここでまた博士が口を開いたのだった。
「石榴とはまた奇妙な話じゃ」
「奇妙?」
そのケーキを食べながら博士の言葉に顔を向けた牧村だった。
「奇妙だというのか」
「石榴の味はあれじゃよ」
博士は石榴のその味の話をするのだった。
「人間の味がするとされておるがじゃ」
「そういえばそうだったな」
牧村も博士の今の言葉でそれを思い出したのだった。この話は仏教で鬼子母神の逸話として出て来るものである。実際は違うというがだ。
「それが出て来るとはのう。妙な話じゃ」
「そうか。人間の味か」
「あまりよくない質問じゃが」
博士はここでこう前置きをしてそれから述べた。
「美味いのじゃな」
「美味いな」
一言で答えたのだった。
「確かにな」
「そうか」
「しかしこれは人間じゃない」
牧村は言い切った。
「石榴だ。人間は石榴ではない」
「それはその通りじゃよ」」
牧村に対して応える牧村だった。
「全く以ってのう」
「ではそれでいいな。石榴は石榴だ」
「やはりわしの考え過ぎか」
博士はあらためて首を捻る。その彼に対して妖怪達が
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