第二十四話 妖異その七
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「お野菜も切って」
「それでじっくりと煮てね」
「じっくりか」
牧村は彼等の言葉を聞いてまた述べたのだった。
「じっくりと煮るのか」
「スジ肉は固いからね」
「よくアクを取りながらね」
アクの話もここで出されるのだった。
「それで食べるんだよ」
「じっくりと煮るんだ」
このことは念押しされるのであった。妖怪達のその口から。
「絶対にね。さもないと」
「とても食べられないよ」
「そういうものなのか」
彼等のその言葉を聞いて頷く牧村だった。
「じっくりと煮てか」
「スジ肉はどれもそうだけれどね」
「使う場合はね」
それはスジ肉ならばというのだった。
「じっくりと煮るんだ」
「そうじゃないとね」
「お袋はそれをわかっているのか」
いないのか。そこが不安になった。するとだった。
「ああ、心配無用じゃ」
「あっ、博士」
「そうなんだ」
妖怪達は今度はそちらに顔を向けたのだった。博士の方にである。
「心配いらないの?」
「そうなの?」
「いらんいらん、スジ肉をカレーに使おうかって言っている時点でもう心配無用じゃよ」
博士はいつも通り顔を崩して笑いながら言っていた。その白髭だらけの顔をである。
「わかっておる証拠じゃ」
「わかっているのか」
「普通の人はそんなことはせん」
博士はこうも話すのだった。
「まずカレーに入れる肉といえばじゃ」
「カレー用の肉だな」
牧村はそれだとはっきり話したのだった。
「それだな」
「カレーにはカレー用の肉」
博士もまた言った。
「そう考えるのが自然じゃな」
「それをあえてスジ肉を使うというからだな」
「その通りじゃ。わかっておるからじゃ」
博士はまた話す。
「そうしたことを言うのもな」
「お袋はわかっているのか」
「いい御母堂じゃな」
今度は彼の母を褒める博士だった。
「そこまでわかっておられるとはのう」
「いや、お袋さんだけじゃないよ」
「妹さんもだよ」
ここで妖怪達は牧村の話から彼の妹である未久のことにも言及するのだった。
「未久ちゃんだっけ」
「牧村さんの妹」
「そうだ」
牧村自身もそうだと話すのだった。
「それがあいつの名前だ」
「まだ中学生なのにわかってるじゃない」
「スジ肉を使ったカレーみたいなものまで」
「妹さん料理とか上手いの?ひょっとして」
「それか食通とか」
「両方だな」
少し考えた顔になって答える牧村だった。
「作るのも上手だが味についても五月蝿い方だな」
「凄いね、中学生でそれって」
「見上げたものだよ」
妖怪達はあらためて彼の言葉を聞いて素直に賞賛の言葉を出した。
「そこまでねえ」
「本当にまだ中学生なのに」
「妹さんまで立派じゃとな」
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