第二十四話 妖異その五
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「確か」
「確かに白米と味は違うわ」
あえてまずいとは答えない母だった。ただし今彼女が食べているのは紛れもない白米である。この家も常に白米を食べているのである。
「それはね」
「あまり食べたくないわね」
未久はここでは見事なまでにその本音を語った。顔にまで出して。
「麦ならともかく」
「麦御飯はいいのね」
「給食にも出るし」
未久の通っている中学校は給食である。そこで出るというのだ。
「あれ美味しいわよね」
「あの学校まだ麦御飯給食に出すのね」
「お母さんも通ってたし知ってると思うけれど」
「勿論よ」
知っているということだった。
「それはね」
「じゃあ麦御飯の味知ってるわよね」
「ええ。だからそれもいいかしらって思ってたりするけれど」
経験からの言葉なのだった。
「玄米は無理でもね」
「私は別にいいけれど」
「そう。未久はいいのね」
まずは未久の言葉を聞いて頷くのだった。そしてそのうえで。
「来期はどうなの?」
「俺も別に構わない」
妹とは全く違ってぶっきらぼうな返事だった。しかし答えることは答えていた。
「それでな」
「そう。だったらいいわね」
母もそれで納得するのだった。
「じゃあ気が向いたらするわね」
「気が向いたらなの」
「お母さんも麦御飯は好きだけれど炊くのが白米とまた違うから」
「あれ、ただ麦を入れるだけじゃないの?」
「雑穀が入るとまた違うのよ」
このことを言うのだった。しかもわりかし強くである。
「味も違うし炊き方もね」
「味だけじゃないの」
「確かに栄養はあるけれどね。他にも色々と入れると」
「じゃあ気が向いたらしてね」
未久もあまり強く言わなかった。わざとそう言うのを避けている感じであった。
「その時にね」
「そうするわ。麦の他にも色々あるし」
「稗とか粟とか黍とか?」
「あと大豆もね」
そうしたものを入れた飯の話をする二人だった。栄養のことを考えれば確かにいいのは確かである。白米だけではどうしても限界があるからだ。
「そういうのも入れてね」
「いいじゃない。気が向いたら」
「あくまで気が向いたらね。けれどまあ」
母はここまで話してそのうえでまた言ってきた。
「栄養を考えてもいいし味を考えてもいいしね」
「いいこと尽くめよね」
「そうでしょ。特にあんたにはそうね」
また息子に顔を向ける。黙々と食べている我が子をである。
「身体動かしてるからね。それもかなり」
「私もね」
未久もそこに入ろうとしてきた。そしてそれは成功した。
「だから余計にね。いいわね」
「お父さんにもいいんじゃないの?」
未久は今度は父を話に出したのだった。
「お父さんにも。健康の為に」
「そうね。お父さんもよね」
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