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MUV-LUV/THE THIRD LEADER(旧題:遠田巧の挑戦)
閑話U 岩沢慎二という男
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たため暴走は一瞬だったが、被害にあった訓練兵は内部の強化外骨格ごと押しつぶされ圧死した。演習は即時停止、MPに逮捕された慎二は軍法会議にかけられた。
 訓練兵とはいえ軍人である。仲間を故意に殺し戦術機を大破させた罪は重く、銃殺刑は確実だった。しかしここで光菱財閥の存在が状況を複雑にする。慎二は紛れもなく光菱の関係者であり、父親は光菱重工の社長。そして光菱重工は日本の戦術機開発に不可欠な存在だった。さらに光菱は帝国軍上層部とも結びつきが強いために軍としても公に罰することは難しかったのである。さらに当時、父の右腕として辣腕をふるっていた慎二の兄も東奔西走し何とか慎二の罪状を軽くしようと裏に表に交渉していた。
 結果として会議では『演習時の戦術機接触による不慮の事故』ということで内々に処理された。慎二は実刑を受けることはなかったが衛士になることはもちろんできず、軍の不祥事の渦中にいた人物なので家に帰ることもできなかった。そのために軍で飼い殺しにされ、技術廠参与という立場で配属された。本来は兵器開発を担当する技術廠に知識人として様々な観点からの助言をする役職であるが、逆にいえばそれだけである。何の実権もなく毒にも薬にもならない存在であった。それからというもの慎二からは生気がなくなり、酒と女の自堕落な日々を過ごすことになった。
 
 慎二が技術廠参与に任命されてから一年後。定例会議に出席しいつも通りぼんやりしながら会議を聞き流していると、気になる言葉が出てきた。
「先日の厚木基地で行われた米軍試験部隊との模擬戦闘の報告です。」
「米軍のF-15E<ストライク・イーグル>か…。厚木基地の大隊に中隊規模で圧勝するとは、相も変わらず米国の技術力は恐ろしいものがあるな。新型ではなくただの改修機でこの性能だ。また上層部から無茶な命令が増えそうだな。」
 米国製の戦術機の性能を知り、技術廠にそれを超えるものを作れと命令する。いつものパターンである。
「新型の開発も急がねばならんな。だが陽炎の技術研究も終わり、試作機も完成間近だ。」
「はい。試験部隊の人員も考えなくてはなりませんね。」
「そうだな、やはり富士教導隊あたりが適当か。」
「はい。しかしいくつか問題があると思います。」
「ふむ?」
「富士教導隊は歴戦の凄腕衛士ですから、新型の能力を最大限発揮してくれると思います。ただ一方で新人や平凡な能力しか持たない衛士による試験も必要です。新型は帝国の主力となる予定ですから、戦術機操縦の経験の浅い訓練兵や大多数の平均的な能力の衛士の反応も重要となるかと思われます。」
「なるほどな…しかし人事は難しいぞ?試験機は多くないからな。無作為に選抜することはできん。何かあてがあるのか?」
「現在のところ数人ですが。新人からはこの衛士を推薦したいと思っています。この資
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