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髑髏天使
第二十三話 異形その二十四
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「それは覚えておくことだ」
「その言葉も聞いた」
「それではだ」
 ここまで話すとだった。姿を元のジーンズのものに戻しそのうえで牧村に背を向けた。
「今はこれで去ろう」
「また会うことになるな」
「貴様が本意であろうと不本意であろうとな」
「安心しろ。不本意とは思ってはいない」
 それについてはというのであった。
「特にな」
「何も思っていないのか」
「俺は俺の前に現われる魔物を倒す」
 牧村は今はビルの屋上から離れようとしない。そこから見える無数のビル群を見詰めそのうえで死神に対して語るのだった。
「それだけだからな」
「貴様の態度も相変わらずだな」
「今の俺を変えるつもりはない」
 何も隠さない言葉であった。
「何もな」
「私もまた同じだ」 
 背を向け出口に向かいながらの言葉だった。
「己を変えるつもりはない」
「貴様もなのだな」
「そして貴様に対してもだ」
 こうも言うのであった。
「それは変わらない」
「そうか」
「そういうことだ。ではな」
 ここまで言って姿を消した死神だった。一人になった牧村は暫く景色を眺め続けていた。しかしそれは突如として終わることになった。
 急に胸ポケットに入れてあった携帯が鳴った。それに出るとだった。
「ああ、来期ね」
「お袋か」
「そうよ。ちょっと頼みたいことがあるんだけれど」
 電話の向こうからこう言ってきたのであった。
「いいかしら」
「頼みたいことか」
「実はね。お母さん買い忘れたものがあって」 
 一応は申し訳なさそうな調子である、しかし言うことはしっかりと息子に告げるのだった。
「それ、帰りに買って来て欲しいんだけれど」
「何をだ?」
「ほうれん草よ」
 それだというのである。
「ほうれん草。いいかしら」
「ほうれん草か」
「今夜はそれでおひたしを作るつもりなの」
 その予定についても彼に話してきたのだった。
「だからね。御願いだから」
「わかった」
 ここまで聞いたうえで頷いてみせたのだった。電話での声で。
「今から買って来る」
「御願いね。スーパーでも何処でもいいから」
「ほうれん草なら何でもいいのか」
「何でもってわけじゃないけれど」
 一応こう言いはしてきた。
「そうね。新鮮なの御願いね」
「新鮮なものをか」
「ほうれん草はそれに限るわ」
 流石主婦であった。そうしたところもわかっているのである。
「だからね。それを選んできてね」
「わかった」
 牧村も母のその言葉に対して頷いた。
「では今から買って来る」
「今日はお魚だから」
 他のおかずについても話してきたのだった。
「それもあるからね」
「魚か」
「鯖焼くのよ」
 しかも何かまで話してきた。鯖だというのである。
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