第二十三話 異形その二十三
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「これはな」
「神の力は己自身も癒すことができるのだな」
「そういうことだ。そしてだ」
「そして?」
「それは天使も同じだ」
牧村に告げている言葉なのは言うまでもなかった。
「天使もな」
「俺はそうした力は使うことはできないのだがな」
「ではその左の腕は何だ」
ここでこう彼に告げたのであった。
「その左腕はだ」
「左腕だと?」
「魔物の攻撃を受けて使えなくなっていた筈だな」
「見ていたのか」
「見えたのだ」
こう言いはする。しかし目に入ったことは間違いなかった。
「それで少なくとも剣を握れないまでのダメージを受けたな」
「その通りだが」
「しかし今はどうだ」
その彼自身を見据えての言葉だった。
「貴様のその腕は」
「ふむ」
死神に言われてその左腕を見てみる。そのうえで動かしてみるとだった。
「何ともないな」
「治っているのだ」
そうだというのだった。
「既にな」
「自然に治癒したというのか」
「元々髑髏天使にはそうした力が備わっている」
死神はここで彼にこのことを話した。
「そしてそれは階級が上がる毎に強くなっていく」
「それでだというのだな」
「そうだ。はっきり見えないものだがな」
「そういえばこれまでも何度も傷を負っていたが」
戦えば傷を受ける。これは当然のことだった。それから避けることはまず不可能なことである。牧村自身が最もよくわかっていることだった。
「俺はその中でか」
「そういうことになる。階級があがるごとにな」
「傷を癒す力も強くなっていたのか」
「とりわけ土の力はだ」
先程彼がなったその主天使の力のことである。
「それが一際強いものだ」
「一際か」
「土は全てを癒す」
こう言う死神だった。
「だからだ。その力を身に着ければだ」
「俺の身体も癒されていくのか」
「そういうことだ。わかったな」
「確かにな。では俺はそのことでも強くなったのだな」
今まで彼が自覚していなかったことだ。だが今は実によく実感できるものだった。その右手が癒され元通りに動けるようになっていたからである。
「傷が迅速に癒されることでも」
「そういうことになる。そして」
「そして?」
「その癒しの力も人のものではない」
死神の言葉はここで変わった。
「それも覚えておくことだ」
「そうなのか」
「髑髏天使のものだ。それも覚えておくことだ」
「話は聞いた」
そう言われてもこう返すだけの牧村だった。
「髑髏天使としての力だな」
「貴様のものであってそれでいて貴様のものではない」
死神はその牧村を見ながら告げていた。
「それは覚えておくことだな」
「もう一度言おう。話は聞いた」
牧村の言葉は今も変わらなかった。
「一応はな」
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