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MUV-LUV/THE THIRD LEADER(旧題:遠田巧の挑戦)
13.任官
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たら死んでいたんだ…。任官先で死なない保証なんてない。『死の八分』などと言われているように新任の死亡率は高い。柳田さんも新任が生き残るのに必要なのは操縦技術ではないと言っていた。 そう思うと城井中尉が言った『戦う理由』という言葉がどうにも気にかかる。
 俺は任官先に行く前にもう一回城井中尉と話したいと思った。

 今日パンサーズは非番でそれぞれが思い思いの時間を過ごしている。城井中尉は政府が援助している厚木基地近くの保育園に行っているらしい。子供と遊んでいるのだろう。
 家族水入らずの時間に行くのは気が引けるが、もう出発まで日がない。ゆっくり話せるのは今日だけだ。
 俺は厚木の保育園を訪ねた。保育園の壁には帝国軍のポスターがたくさん貼ってあり、戦術機や兵士達の訓練風景の写真、インタビューで誇らしげに自分たちの仕事を語っている衛士の写真やコメントなどが目にとまる。スケジュール表では厚木基地へ社会科見学に行く日程が書かれていたりと、幼児教育でも軍隊志向が強く反映されているのが分かる。少なくとも俺の記憶ではこんな感じじゃなかった。
 俺は事務室で城井中尉は今お昼寝教室にいると聞いたので、そこに向かった。そこでは訓練の時とは全く別の『母親』の表情をした中尉がいた。ギャップが激しすぎて驚いた……。
多くの園児たちや保育士、母親がいる教室には入りづらく教室前でウロウロしていると中尉の方から俺を見つけたのか、目があった。何か見てはいけないものを見てしまったような気がして気まずかったが、用件は果たしたい。俺が一礼すると中尉の方からこちらに来た。
「今日は非番だ。こんな時まで押し掛けてくるとは迷惑な奴だ。」
 いきなりこれか…。まあ予想していたことだけど。
「すいません中尉。任官先が決まったのでご報告に来ました。」
「貴様の任官のことなら知っている。一々報告などしなくていいものを。用件はそれだけか?」
「いえ、中尉が先日話していただいたことについて任官前に話しておきたかったのです。」
「……分かった。今日の夕方には帰る。PXで良いか?」
「はい。ありがとうございます。」

巧side out



 巧がPXで待っていると城井がやってきた。保育園で見せていた顔はなりをひそめ、いつもの厳しい表情をしている。城井は巧を見つけると正面の席についてきりだした。
「待たせたな。先日の話ということは『戦う理由』か?」
「はい。任官が決まり、中尉に話していただいたことがどうしても気になるようになりました。大陸に行く前に整理をつけておきたいと思いまして…。」
「なるほどな。だが私に言えることはないぞ。そういったものは自分で見つけるものだ。」
「『見つける』ですか?」
「そうだ。少なくとも私はそうだった。私の戦う理由については覚えているか?」
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