暁 〜小説投稿サイト〜
MUV-LUV/THE THIRD LEADER(旧題:遠田巧の挑戦)
13.任官
[3/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
自己申請による除隊は可能ではあるもののほとんど犯罪である。巨額の罰金を課され、それが出来ない場合は権利を失い強制労働を強いられ、非国民として蔑まれる。兵役から逃れようとする者は多いが、デメリットが大きすぎて普通は自己申請せず兵役を終える。兵役は三年。その間は一応衣食住を保証され、除隊後の職業斡旋の補助もあるのだ。
それに申請が通るとは限らない。申請が通らず、それでも命令を拒否した場合は軍法会議で処刑されることもあり得るのである。
 巧の場合は家が遠田技研の創業一族であり、一人息子なので元々徴兵免除の権利がある上に金はある。技術者としての能力も高い。そのため自己申請でも問題なく通るだろう。
 しかし遠田はその道を選ばなかった。
「大尉、自己申請などしませんよ。自分にも逃げ道はないのです。それに意地もあります。」
 巧は周りからは遠田のボンボンなどと言われているが、それほど余裕のある立場ではない。SES計画で家の資産のかなりを消費したし、そもそもSES計画は遠田技研の未来のための計画だ。遠田技研が他の兵器メーカーに負けず第一線の企業として返り咲くために、そしてそこに勤める社員のために巧の衛士としての経験が期待されているのである。それに巧にも意地がある。巧の人生は衛士になるためのものだった。それを今更やめることなど出来ない。
「任官の辞令、確かに受け取りました。これまでありがとうございました。」
「そうか……。お前のような若者が大陸に派遣され、生贄のような部隊に配属されるかもしれないとは世も末だな。大人として申し訳なく思うよ。」
「大尉、自分は死ぬつもりはありませんよ。確かに過酷な任務で、新人の自分が『覚悟』しているなどとは言えませんが、これは自分にとってはチャンスでもあります。最新鋭の機体に乗って前線で戦い、その経験を活かす。考えてみれば自分にこれほど合った任務もないでしょう。」
 巧が不敵な笑みを浮かべて話す。それを見て篠崎は目を丸くして、笑いながら言った。
「くくく……、最後までお前らしいな。今までいろんな衛士を見てきたけどお前のような奴は初めてだったよ。絶対死ぬなよ。生きて帰ってこい!」



巧side

 特別試験中隊の辞令を受けてから数日後任官先が決まった。任官地はインドのカルカッタ。やはり大陸派遣組だったか……。まあ大尉から聞いた時から覚悟していたことだがやはり実戦と聞くと怖いな。
 腕には自信がある。パンサーズに加わって訓練する中で分かったことだが、俺の戦術機の操縦技術は平均からするとかなり高い水準にある。これは自惚れではなく事実だと思う。今なら篠崎大尉や城井中尉にも負けない力がある。
 だけどもちろん無敵というわけではない。シミュレーターでは何回もBETAに食われたし、日米合同訓練も結局撃墜された。実戦だっ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ