第二十三話 異形その十一
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「よいな。人としてな」
「わかった。それではな」
「うむ」
こう言葉を交えさせて部屋を後にした。それからサイドカーで道を走っているとだった。その横にあの老人がいるのに気付いたのだった。
そこに近付きサイドカーを彼の前に止めた。すると老人が彼がヘルメットを脱ぐよりも早くあの穏やかな声を彼に対してかけてきたのであった。
「お久し振りです」
「貴様に会うのは確かに久し振りだな」
「いや、お元気だとは聞いていましたが」
穏やかな言葉は続く。まるで世間話の様なものが。
「実際にこの目で見てみると話以上ですね」
「幾つの目で見ての言葉だ?」
ヘルメットを脱いだ牧村はこう彼に問うてみせたのだった。
「その言葉は。幾つの目で見ての言葉だ」
「二つと言えば嘘になりますね」
老人はその穏やかな笑みをたたえたまま述べてみせたのだった。
「それは」
「そうだな。貴様の目は無数にある」
「実のところ私自身幾つあるのかわかりません」
彼自身もだというのである。
「果たして幾つかは」
「わからないというのか」
「百となっていますがそれより多いかも知れません」
これが彼自身の言葉であった。
「果たしてどの程度なのか」
「そうか。そこまでなのだな」
「それにです」
老人はさらに言葉を出してみせてきた。
「多ければ多いだけ有り難いものでもありますし」
「多ければそれだけか」
「あらゆるものが見えますから」
だからだというのであった。彼自身の言葉によればだ。
「いいものです。そう」
「そう?」
「もう一人来られましたね」
ここでこんなことも言ってみせてきたのであった。
「見えていますよ」
「わかっていたか」
牧村から見て右手、老人から見て左手に彼が来ていた。今は黒いジーンズに皮のジャケットというワイルドな格好の彼が歩いてきていた。
「私のことは」
「何しろ無数の目がありますので」
顔だけは穏やかにその彼、死神に対して返す老人であった。
「見えますよ。しっかりと」
「そうか。見えていたのか」
「いや、これで二人と二人です」
老人は牧村にとっては奇妙なことを告げてきた。
「有り難いことです」
「二人と二人だと」
牧村はその奇妙な言葉の意味をすぐに察した。
「つまり貴様だけではないか」
「はい。もうすぐ来られます」
道の端に立ったまま話す老人だった。牧村はその正面にサイドカーを後ろにして立っている。死神は今は何も連れてはいない。
「もうすぐ」
「あの男か」
死神は彼の言葉を受けて言ってきた。
「あの男も封印から放たれ出て来たのだな」
「左様です。さあ来ましたよ」
「百目か」
二メールはあろうかという男であった。彼が牧村から見て右手、死神から見て正面に姿
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