第二十三話 異形その三
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「歓迎の準備をしておくか」
「髑髏天使が何時来てもいいようにもしておくか」
こう言ったのは紳士だった。
「もっともどちらかが向かうだろうがな」
「そうですね。ですが」
ふと老人が一歩前に出てそのうえで言うのであった。
「今回は私も行かせてもらいますか」
「あれ、あんたがなの」
「行くというのか」
「はい。久し振りに」
こう女と男に返すのであった。
「遊んでみたくなりました」
「ちぇっ、僕が行こうと思っていたのに」
子供は今の彼の言葉を聞いてつまらなさそうに口を尖らせてみせた。
「つまらないな」
「まあいいじゃないか」
ロッカーはその彼の肩をぽんと叩いて慰めてきたのだった。
「また今度があるからな」
「そうだね。じゃあまた今度だね」
「では今回はだ」
「貴殿に任せよう」
青年と紳士は老人でいいとしたのだった。
「それではな」
「遊んで来ることだな」
「遊びはやはり心がときめきます」
実際ににこにことさえしている老人であった。
「髑髏天使と死神。どちらにしと楽しみです」
こう言って彼は姿を消した。また一人魔神が日本に現われあらたな戦いがはじまろうとしていた。
牧村は階級があがった時の常としてすぐに博士の下を訪れた。そうして彼の研究室において主天使になったことを説明したのであった。
「緑色か」
「そうだ。そして力は土だ」
このことを博士に対して述べる。博士は相変わらず自分の机に座りそこで彼の話を聞いている。彼はもまたいつもの様に壁にその背をもたれかけさせて立って話をする。周りにはこれまたいつも通り妖怪達がたむろしそれぞれ酒や菓子を楽しんでいた。
「土の力だった」
「うむ。文献にある通りじゃ」
老人はまた文献を開いていた。今度は何か書で紙に書いてあるのが見える。彼はそれを見て博士に対してその文字が何かを問うたのであった。
「日本語か」
「ふむ。わかるか」
「随分と古い文献だな」
「平安時代のものじゃ」
その頃のものだというのである。この文献は。
「平仮名で書かれておる」
「平仮名か」
「しかし随分読みにくいものじゃ」
ここでこうも言う博士だった。文献に目をやりながら首を傾げてさえいる。
「この平仮名は。相当悪筆ナ人間が書いたようじゃのう」
「解読は難しいか」
「苦労しておる」
そのことを隠そうともしない博士だった。
「それでもわかった限りではじゃ。主天使の力は土じゃな」
「俺が使った力そのままか」
「そして緑になるとある。文献では青とあるがのう」
「青はかつては緑という意味もあったな」
「じゃから緑じゃ」
だからだというのである。ここで博士は日本のかつての色の表現への知識も使ったのである。そのうえで牧村に対して語ったのである。
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